抱瓶
三日月形の携帯できる酒器。沖縄の風土で練られた手仕事の美。
福島県会津地方の郷土料理、ニシンの山椒漬けを保存するための鰊鉢(にしんばち)。手がけたのは会津本郷焼の宗像(むなかた)窯だ。
会津本郷焼は16世紀末、会津若松城改修のために瓦を焼いたことから発展したとされる。宗像窯は、奈良時代に宗像大社(福岡県)から移住し、代々神官をしてきた家系が開窯(かいよう)した。
箱形をした鰊鉢は、5枚の板を張り合わせて作る。主に使われる茶色の飴釉(あめゆう)は、焼成後に冷ます過程で表面に入るヒビ割れが少ないため、油がしみにくく水漏れも少ないという。「ニシンをおいしく保存する工夫と、力強い直線美が備わっている。シンプルな形の中に会津の風土や暮らしが凝縮され、柳宗悦が民芸運動で唱えた『用の美』を体現しているといえる」と、職員の深田七海さんは話す。
柳は鰊鉢を「健康な仕事」と評価。1958年のブリュッセル万国博覧会では、出品された宗像窯の鰊鉢がグランプリを受賞した。