焼き上がった南部せんべいをハンマーで粉々に砕き、チョコレートでコーティング。老舗メーカーとは思えない大胆な発想から誕生した「チョコ南部」は、約15年で4500万粒を販売するヒット商品となりました。いまも次々と新商品が生み出され、進化を続けています。
◆和風クランチチョコ
「チョコ南部」は、一口サイズの和風クランチチョコ。南部せんべいのしょっぱさとチョコレートの甘さがからみあい、食感もザクザク感とふんわり感が入り交じります。
「焼きたてを砕くので、香ばしさもあります。せんべいの耳や生地、ピーナッツ、細かい粉となった南部せんべいパウダーも混ぜているので、ジャリジャリ感も楽しめます」。チョコ南部を開発した小松製菓(岩手県二戸市)の青谷耕成・執行役員は話します。
チョコ南部
砕く前の南部せんべいは、型を使って丸く焼き上げた落花生せんべい。そのまま販売できる高品質の完成形です。それを粉砕機で約10ミリの大きさになるよう砕き、チョコレートと混ぜて固めていきます。
チョコ南部は2009年に発売され、岩手県や青森県の土産店、東京都内の岩手県アンテナショップ、オンラインショップで購入できます。チョコレートが溶けやすい夏を除く期間限定販売で、2024年12月までに4500万粒を売り上げました。
岩手屋の店舗
実は当初、商品化は一筋縄ではいきませんでした。「いかにせんべいをきれいに焼くかに長年こだわってきた企業です。できたてを砕くとは何事だ、と猛反発を浴びました」
◆「型を破る」
小松製菓は1948年創業。創業者の小松シキが小松煎餅店を立ち上げ、21丁のせんべい型から南部せんべい作りを始めました。75年に小松製菓に改称し、79年には販売会社「岩手屋」を設立。「おばあちゃんの南部せんべい」として親しまれ、企業として成長を続けてきました。
せんべいの型
南部せんべいを製造する企業は60社にのぼり、競合が厳しい業界です。2003年に入社した青谷さんが向き合ったのが、新商品の開発でした。手のひらサイズの丸く大きな形が一般的な南部せんべいだった当時、小松務社長から「ブルー・オーシャン戦略」の本を渡されます。
「田舎っぽく、お年寄りが好むイメージ。土産として人気だが、コンビニには置かれない。大きくて食べにくく、こぼれやすい」。本を何度も読み返しながら、南部せんべいを見つめ直します。営業先からは「これまでにない商品を作ってもらえないと、売り場におくのは難しい」と厳しい声も寄せられます。
売り上げも調べました。「繁忙期」はお盆と年末年始で、ふるさとに帰省した人たちが土産として購入していました。一方で「閑散期」は厳冬で人の動きが少なくなる1~2月。「閑散期に売れているものは何だろうか」。バレンタイン商戦でにぎわうチョコレートに目をつけます。
ところが、すでに南部せんべいにチョコレートを塗った商品は他社が販売していました。悩み続けて、閃いたのが「型を破る」という発想でした。
青谷耕成さん
◆社長室で1対1に
「南部せんべいを壊したいんです」。新商品のプレゼン資料を片手に1人、社長室に入った青谷さんは、チョコクランチの商品化を小松社長に進言します。「売り物にならない壊れせんべいを使うということか?」「いや、粉砕機を入れて……」。
「バカモン!」。社長の怒鳴り声で追い返されてしまいます。同僚からも「きれいに焼き上がった商品を壊すなんて」と反対の声があがりました。
それでも「チョコレートはいけるはず」。1人、南部せんべいをハンマーでこつこつたたいて、試作品づくりを続けます。砕く粒度(大きさ)を変え、チョコレートの種類を変え、試行錯誤を重ねて2年近く。「伝統を壊すのではなく、伝統を守るために形を変える」。そんな考えが少しずつ伝わり、サンプルのチョコレートを持ってきた社員も出てきました。
進言から2年後。「うまい」。手作りの試作品を味見した小松社長から、商品化にOKが出ます。小松製菓の南部せんべいをつかって、東京のチョコレート会社に製造を委託。2009年12月に発売すると、予想した1年分の注文を1カ月で売り上げる人気商品となりました。
岩手屋本店
「地元出身でないから出てきた発想かもしれません」。秋田県出身の青谷さんは東京の工業大学を卒業後、Uターンで秋田のアパレル会社に勤め、岩手県内のホテルでフロント業務や売店営業にも携わってきました。「ファッションが好き。デザインや色をどう組み合わせるのか考えるのが楽しい」という青谷さんの嗜好も、新商品誕生を後押ししたようです。
◆チョコレートも自社で
ただ、その後も順風満帆だったわけではありません。2011年、再び小松社長の逆鱗に触れてしまいます。好調な売れ行きに乗ってチョコ南部の生産を急ぎすぎ、大量の在庫を抱えてしまいました。
「賞味期限には間に合います」。そう抗弁した青谷さんに、小松社長は全社員が集まった会議で叱り飛ばします。「お客さまに期限ぎりぎりのものを売るのか」。
3万箱、計1千万円分の在庫は、すべて廃棄処分となりました。小松製菓の社是は「感謝と創造」。数日後、「感謝の気持ちを私は忘れていたみたいです」と謝る青谷さんに、小松社長はこう声をかけます。「もう一つ、忘れていることがあるじゃないか。在庫を抱えずにすむ方法を創造してみろ」
東京のメーカーへの委託製造では、大量発注が必要でした。作りたてで美味しいせんべいを提供したいという気持ちは社員全員、違いはありません。「自社でチョコレート工場を造れないだろうか」。社内の定例会議で青谷さんの提案に社長がゴーサインを出す形で、次の一歩を踏み出します。
2016年に完成した新工場は「2door」と名付けられました。地元の二戸市にあやかり、「南部せんべいとチョコレート」「伝統と融合」という意味も込められました。新工場はチョコ南部の製造を勢いづかせます。
2door
◆新商品も続々と
「元祖チョコ南部」から新商品が続々と誕生しています。チョコ南部PREMIUMは、南部せんべいを砕く粒度を約3ミリまで細かくしてチョコレートを厳選。二戸市出身のショコラティエ、猿舘英明さんが味を監修し、ベルギーで開かれた国際的なチョコレートの審査会で優秀味覚賞を受賞しました。
チョコ南部PREMIUM
せんべいを砕く粒度の幅も広がっています。8分の1サイズや5分の1サイズなど小型に割った商品も開発しました。「あそこまで粉々にしたんだから、もう何をやってもいいと社長から言われました」(青谷さん)。
「割りしみチョコせんべい」は、ごまの南部せんべいを8分の1サイズにして、ホワイトチョコレートと配合しています。「Bar南部」は、岩手県山田町の醤油特製ダレや盛岡市の地ビール「ベアレン醸造所」のビール酵母を隠し味に含めたおつまみです。
今年1月には、知的障害者のアートの商品化に取り組むヘラルボニー(盛岡市)と連携し、パッケージ缶のデザインに作品を採用するなどした新商品「choconanbu MAGIC」も発売しました。
choconanbu MAGIC
南部せんべいは500年の歴史があると伝えられています。南部藩の野戦食でもあり、白米を口にできない農家では主食になっていました。「長い歴史がある南部せんべいを後世に残していきたい」。時代の移り変わりとともに型破りの発想で商品開発を続けていくことが、その願いをかなえる道だと青谷さんは信じています。
(野村雅俊)
南部せんべい
写真は小松製菓提供
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▼チョコ南部 16個入り
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プレゼント応募締切:2025年4月25日16時