抱瓶
三日月形の携帯できる酒器。沖縄の風土で練られた手仕事の美。
フライパンのように持ち手のついた、手のひらサイズのエッグベーカー。卵を割り入れて火にかけると目玉焼きができる。松江市の湯町窯を代表する器だ。
湯町窯は、江戸時代から続く布志名(ふじな)焼の流れをくんで1922年に開窯(かいよう)した。昭和初期、日常づかいの器や道具に美を見いだす民芸運動の創始者・柳宗悦らが布志名焼に注目して来訪。中でもイギリスの陶芸家バーナード・リーチは洋食器の製法や技法を伝授し、化粧土で装飾した陶器「スリップウェア」やピッチャーなどの制作が普及した。
「丸みを帯びた形が愛らしく、手になじみやすい。温かみのある黄色も特徴です」と、展覧会を企画した職員の深田七海さん。布志名焼伝統の黄色は、県内で採取した来待石(きまちいし)を原料にした釉薬(ゆうやく)から生み出される。柳は著書の中で、「出雲の産物で是非とも記さねばならないのは所謂『黄釉(きぐすり)』の焼物」と紹介している。