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美博ノート

エッグベーカー

豊田市民芸館「おいしい民窯 食のうつわ」

島根県湯町 本体=口径7.8センチ、高さ6.7センチ 受皿=径15.1センチ、高さ2.8センチ 豊田市民芸館蔵

 フライパンのように持ち手のついた、手のひらサイズのエッグベーカー。卵を割り入れて火にかけると目玉焼きができる。松江市の湯町窯を代表する器だ。

 湯町窯は、江戸時代から続く布志名(ふじな)焼の流れをくんで1922年に開窯(かいよう)した。昭和初期、日常づかいの器や道具に美を見いだす民芸運動の創始者・柳宗悦らが布志名焼に注目して来訪。中でもイギリスの陶芸家バーナード・リーチは洋食器の製法や技法を伝授し、化粧土で装飾した陶器「スリップウェア」やピッチャーなどの制作が普及した。
 「丸みを帯びた形が愛らしく、手になじみやすい。温かみのある黄色も特徴です」と、展覧会を企画した職員の深田七海さん。布志名焼伝統の黄色は、県内で採取した来待石(きまちいし)を原料にした釉薬(ゆうやく)から生み出される。柳は著書の中で、「出雲の産物で是非とも記さねばならないのは所謂『黄釉(きぐすり)』の焼物」と紹介している。

 

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