エッグベーカー
柳宗悦がほれ込んだ、つややかで温かみのある黄色の釉。
抱瓶(だちびん)は、沖縄の伝統的な酒器で、両側の耳にひもを通して水筒のように持ち運べる。肩にかけた際、腰にフィットするよう三日月形に作られている。
大胆で色鮮やかな装飾が施された抱瓶は、琉球王国時代から上流階級の人々が愛用した。「装飾の華やかさを見せ合い、競ったともいわれている。そのために陶工たちが腕を振るったのだろう」と、職員の深田七海さんは説明する。現在では鑑賞用の置物や花器としても用いられるという。
古くから中国や南方諸国の焼き物が集まった沖縄では17世紀末、現在の那覇市街地で複数の窯元を統合し、壺屋(つぼや)焼が誕生。抱瓶も多く作られた。昭和期には民芸運動を展開した思想家の柳宗悦や陶芸家の浜田庄司、染色家の芹沢銈介らが訪れて広く紹介し、脚光を浴びた。「沖縄の風土の中で繰り返し作られ、きわめられていった手仕事の美しさが魅力的だったのだろう」と深田さんは話す。