琥珀が眠る地層の隆起により日本最大の産地となった岩手県北部の久慈。その地層の上に立つ当館は、採掘場も持つ、琥珀製品の加工販売会社の企業博物館です。美術工芸品や原石、虫入り琥珀など約4千点を所蔵しています。
琥珀は木の樹脂が大雨などで流され、土砂の中で化石化したものです。久慈の地層は約9千万年前の白亜紀後期、つまり恐竜が生きた時代のもの。現在採掘利用されている中では世界でもここだけで、琥珀の中から新種の生物が見つかる確率も高いんです。
今年9月にも新種のコケ入り琥珀の発見を発表し、展示中です。コケは円盤状の枝が新種と判断され「クジフタマタゴケ」と命名されました。この琥珀、きれいな形をしていますよね。ペンダントなどにしようと研磨作業をしていた技師が見つけたんです。琥珀化石は生物がそのまま立体で保存されたタイムカプセルですね。調査は時間や費用がかかるため、まだ調べていないものが二、三千あります。
日本で琥珀の宝飾価値が一般に認められるようになったのはこの50年ほどです。大戦中は溶かした琥珀を塗装剤として軍艦のさび止めやレーダーの絶縁体に利用しました。
それに比べ、古くから芸術・美術品としての利用にたけていたのがロシア。「ルーシ 戦争と平和」は、ナチスに略奪されたエカテリーナ宮殿の「琥珀の間」の復元も手がけたロシアの職人を招いて合作したモザイク画です。裏側から彫刻して立体感を出す高度な技術がみられます。
琥珀の背景には様々なストーリーがあり、知るほどに魅力にとりつかれます。
(聞き手・中村さやか)
《久慈琥珀博物館》 岩手県久慈市小久慈町19の156の133(問い合わせは0194・59・3831)。午前9時~午後5時(入館は30分前まで)。500円。新種コケ入り琥珀は30日まで展示。31日、1月1日休み。
館長 新田久男 しんでん・ひさお 2016年から現職。久慈琥珀社長。琥珀の調査や商品化、琥珀産地で久慈市の姉妹都市があるリトアニアとの交流にも取り組む。 |