仙台城三の丸跡に立つ当館は、仙台藩主だった伊達家からの寄贈資料を中核に所蔵。
夏の常設展「支倉常長帰国400年」の特集展示では、6年半ぶりに国宝「慶長遣欧使節関係資料」全47点をそろえています。
藩士の常長は1613年、伊達政宗の命で、慶長遣欧使節の一人として現在の宮城県石巻市から出航。
藩領内への宣教師派遣とスペイン領メキシコなどとの交易を求め、スペイン国王とローマ教皇に謁見しました。
徐々に強まった幕府の禁教政策が欧州にも伝わって交渉は不調に終わり、出帆から約7年後に持ち帰ったものの一つが、ローマで描かれた「支倉常長像」。国内に現存する実在の日本人の油彩肖像画としては最古のものです。
飾り付きの洋服の上に黒い着物を着た姿で、脇差しやロザリオの意匠などが細かく描写されているのが興味深いですね。
真ん中の縦に入った筋は、禁教政策がとられた江戸時代にキリスト像に祈りを捧げる姿の絵を隠そうと畳んだ際の折り目と考えられています。
支倉家は常長の息子の代に召使がキリシタンであることが発覚し、一度断絶。その際、この絵も藩に没収されたと考えられています。
「伊達政宗所用印章」は、使節が教皇に届けた文書に朱印で押されました。
政宗の印がある文書は少なくとも32種が確認されており、形や図柄は多種多様。
この印章は国内向けには黒色で押され、政宗が海外への文書に朱印を用いた意図や、大半の図柄の意味はまだ分かっていません。
(聞き手・小森風美)
《仙台市博物館》 仙台市青葉区川内26(問い合わせは022・225・3074)。
午前9時~午後4時45分(入館は30分前まで)。
「支倉常長像」は常設展示、「伊達政宗所用印章」は9月13日(日)まで展示予定。
460円。
施設設備の緊急点検により、当面の間臨時休館。
学芸員 黒田風花 くろだ・ふうか 専門は日本中世史。館では近世歴史資料を担当。2018年から現職。 |