似鳥美術館
北海道で生まれた家具のニトリが開いた「小樽芸術村」は、20世紀初頭の建物群を利用して、美術品や工芸品を展示しています。
1895(明治28)年開館の旧帝国奈良博物館本館は、2010年に「なら仏像館」としてリニューアルオープン。奈良に都があった飛鳥、奈良期の金銅仏や土、漆の仏像から、奈良後期の鑑真渡来以降に主流をなした木彫仏まで、常時約100件を通史的に展観しています。
館内中央に立つのは、「如来立像」。頭部の螺髪や鼻先、両手は失われ、全体にやつれが目立ちますが、深く彫られたまぶたや唇、メリハリのある衣文、ふくらみを強調した太ももに存在感があります。一本の木から像の主要部分を彫り出す一木造が主流だった平安初期の作。実在感に満ちた姿は、この頃の木彫仏の特徴をよく表しています。一時は風雨にさらされるなど、過酷な環境に置かれていたのでしょうが、今ここに存在するのは、傷んだ仏像を人々が信仰の対象として守り伝えたということ。我々を見守るような表情で、朽ちてなおエネルギーに満ちています。
奈良・興福寺に伝わった四天王像の一体「多聞天立像」は、平安~鎌倉期の秀作。腰を強くひねり高々と宝塔を掲げるダイナミックな動きと、胸部や下半身のはちきれんばかりの造形が見事です。革製の鎧が腰のひねりで伸縮し、紐が脇腹に食い込む様子を巧みに表現した作者の技量がうかがえます。明治期以降、幾度か所有者が変わった後、かつて興福寺の境内だった当館が立つこの地に戻りました。
(聞き手・山田愛)
《奈良国立博物館 なら仏像館》 奈良市登大路町50。午前9時半~午後5時(12月28日を除く金、土は8時まで)。520円。月(祝休の場合は翌日)、1月1日休み。問い合わせは050・5542・8600。
主任研究員 山口隆介 やまぐち・りゅうすけ 専門は日本彫刻史。鎌倉国宝館を経て2011年から奈良国立博物館勤務。特別展「快慶」を担当。 |