つめをぬるひとさん(爪作家)
「アフター・ヤン」(2021年) 「テクノ」と呼ばれる人型ロボットのヤン、中国系の養女・ミカ、養父母が暮らす近未来が舞台です。
「アフター・ヤン」(2021年) 「テクノ」と呼ばれる人型ロボットのヤン、中国系の養女・ミカ、養父母が暮らす近未来が舞台です。
ラストシーンの字幕が出たときに、劇場内が大きな動揺に包まれました。ロビーに出たらみなさん泣いてて。単館上映だったのにTVや口コミで話題になって、劇場が増えてったんですよね。
シンガーを夢見るドラァグクイーンのルディ。ゲイであることを隠して生きる弁護士のポール。愛を知らないダウン症の少年マルコ。1970年代のカリフォルニアの片隅で孤独を抱える3人が出会い、差別や偏見に直面しつつも、お互いの存在を分かち合いながら愛を育んでいきます。
特に印象深いのはホームビデオの場面。ハロウィーンから翌夏までの3人の日常が音のない映像で描かれます。マルコの人生で最も幸福なとき。そんな人生のコントラストをクリスマスパーティーのシーンを題材にトーストで表現しました。
白くて酸味のあるサワークリームに、パテやクリーム状のチョコレート2種類、カラースプレーで装飾を凝らしたミニドーナツ。人との関係で生じる彩りは、人工的なものだからこそ表せると感じて、初めて着色料を素材に使いました。周りの三つのドーナツは「食べ始めちゃうマルコ」「半分こにしたいポール」「しっかり多くもらうルディ」。ゴテゴテが大好きなマルコ仕様のトーストはおいしくもギルティーな味がしました。
運命みたいな出会いじゃない。騒がしい部屋からマルコを救い出したことがきっかけで、ルディは一生添い遂げる愛を見つけます。そんな風に世界がガラリと一変するようなエッセンスが詰まった作品なので、繰り返し見たくなるのかもしれません。
(聞き手・島貫柚子)
監督=トラビス・ファイン
製作国=米
脚本=黒澤明、橋本忍 出演=アラン・カミング、ギャレット・ディラハント アイザック・レイバほか ささまな
1992年生まれ。東京都出身。武蔵野美術大学卒。NHKEテレ「ねこのめ美じゅつかん」など出演。インスタグラムは@sasamana1204。 |