秋山寛貴さん(お笑い芸人)
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
20代前半の1960年代、全然仕事がなくって、街をよく歩いていたら、当時、東京・新橋にあった「飛行館」の前で、赤いタイツ姿の女の子の映画のポスターに出会ったの。そこで映画をやっていて、中に入ったらおじさんばかり、きっとセクシーな映画だと思ったのね。実際はおちゃめなコメディーで、コラージュやスクラップブックをめくるみたいに、場面がパラパラ変わるんです。
赤ちゃんが欲しいキャバレーの踊り子、アンジェラ。同棲(どうせい)するエミールとは意見が合わず、ついに別の男性にお願いすると言い出すんです。
彼らは、シャワーがポンコツだったり、隣人に電話を借りに行ったり、不自由な生活をしている。でも、アンジェラは気にせず、鼻歌まじりで、踊るような足取りで屈託なく、毎日を生きています。それに彼女は、平凡な生活を非日常に変える天才なのよ。1枚のカーディガンを前後逆にアレンジして着たりね。アンジェラの赤いストッキングに白いコート、それにエミールの青いスーツなどフランスっぽいトリコロールが場面の所々にちりばめられていて絶妙でおしゃれ。エスプリの利いたパリジェンヌのノンシャランぶりは、今でも私のお手本かも。
彼女がカメラに向かってウィンクするのは、「どんなことも楽しんでね」って語りかけているような気がしたわ。私が描くイラストの女の子がよくウィンクしているのは、私からのエール。どんな日常も宝物よ。
聞き手・佐藤直子
監督=ジャンリュック・ゴダール
製作=仏
出演=アンナ・カリーナ、ジャンポール・ベルモンドなど たむら・せつこ
著書に「おしゃれなおばあさんになる本」(興陽館)など。1975年の創刊時からサンリオ「いちご新聞」でエッセーを書き続ける。 |