寛政暦(部分)
当時の先端。天体観測からより正確な暦作り。
吉田宿(現在の愛知県豊橋市)の名物として、祭礼行事を描いた本作。ササを差したちょうちんを先頭に、太鼓を打ち鳴らす人々、まんじゅう配り、馬に乗った武者姿の行列が続く。
歌川広重(1797~1858)が50代で手がけた東海道五十三次シリーズの「隷書版」は、名所の景観を広々と捉えた構図が特徴。一方で、人々の顔かたちは太めの描線と少ない筆数で明確に表し、風景と人物表現の両方を楽しめる。
本作は、行列を囲む見物客の人相や服装まで細かに描き分け、老若男女が集う祭りであることを説明しているという。「広重の人物表現の幅広さ、群衆を描き分けられる技量が見て取れる」と、中山道広重美術館学芸係長の常包美穂さん。「江戸時代の人々は、浮世絵を手に取って眺めていた。風景の中に描かれたコミカルな人物たちまで、じっくりと見て楽しんでいたのだろう」