新訂万国全図 東半球・西半球(写)
日本が中央に。江戸の最先端世界地図。
聖母マリアに抱かれた幼子イエス。足に口付けをする洗礼者聖ヨハネに、イエスは指を掲げて祝福を贈る。母子を中心とした聖家族図は、スペイン芸術文化の黄金期といわれる17世紀にしばしば描かれた。
カトリックとプロテスタントの対立が激化したこの時代、カトリック国のスペインでは聖書の場面や聖人伝を広く伝える絵画が多く作られた。作者のフアン・カレーニョ・デ・ミランダ(1614~85)は宮廷画家として王家の肖像を手がけた一方、宗教画も残した。
画面の両端で母子を見つめるのは、マリアの父母。2人の表情は憂いを帯びている。「イエスに将来降りかかる受難をほのめかしているようだ」と、三重県立美術館学芸員の坂本龍太さんは話す。
同館と長崎県美術館は国内でも珍しく、スペイン美術を収集方針の一つに掲げている。今展では2館が所蔵する中世~現代の作品を紹介する。