博物館の真ん中に、長さ約30メートルの発掘現場が! 土も石もむき出しのまま、なぜここに?
徳川家康が築いた駿府城の跡地、駿府城公園と隣り合う静岡市歴史博物館。大きな屋根がかかった1階中央部に広がるのは、この場所から発掘された「戦国時代末期の道と石垣の遺構」だ。土と砂利を混ぜ固めた路面は幅2.7メートル、長さ33メートル。その両脇に石垣が連なる。
遺構は、館建設を控えた2019年の発掘調査で見つかった。「何か出てくるだろうとは思っていましたが……予期せぬ発見でした」。調査を担当した静岡市文化財課の小泉祐紀さん(44)は、当時の驚きを振り返る。
「道と石垣」が造られたとみられる戦国時代末期、この場所は駿府城正面のすぐ外側にあたり、重臣クラスの人物の屋敷があったとも考えられるという。その後、城代屋敷、図書館や小学校などに変遷したが、遺構は地表の約1メートル下に残っていた。
発掘された遺構を保存するためには、調査後に埋め戻すことが多いという。「道と石垣」を埋め戻すか、公開するか。公開するなら、透明な床で覆って保護するか。議論を重ね、出土した状態のまま公開する露出展示を決めた。
「家康を主人公にした博物館の地から見つかったのだから、実物そのままを見てもらいたいという思いがあった」と、同館学芸員の宮崎泰宏さん(35)。「遺構の露出展示は珍しい方法。大きな決意で踏み切った」という。
当時すでに建物の設計は完了目前だったが、遺構を取り込んだ設計へと大きく変更した。2階、3階の展示構成を見直し、2階展示室入り口と1階を結ぶスロープで遺構をコの字形に囲んだ。「家康も歩いたかもしれない道」を間近に感じる仕掛けとして、遺構の高さまで下りる階段も設置した。
遺構公開から2年。土や石が露出しているだけに温湿度管理や消毒、定点調査などを欠かさず行いながら、400年以上前の息吹を伝えている。
(木谷恵吏、写真も)
DATA 設計:SANAA事務所 《最寄り駅》:静岡 |
静岡市歴史博物館1階のミュージアムショップ・カフェ(☎054・269・6606)は、ガラス越しに駿府城公園の中堀や東御門・巽櫓(たつみやぐら)を眺めながら喫茶を楽しめる。市内外に8店舗を展開する「hugcoffee(ハグコーヒー)」が運営し、「宇宙一濃い抹茶シェイク」(1100円)や「和三盆抹茶ラテ」(680円)などを提供する。営業時間、休みは博物館と同じ。