3面の壁全体が透かし彫りで覆われた講堂。この発想はどこから?
現在の同志社大学などを創設した新島襄ゆかりの地にあり、キリスト教精神に基づく人格教育を理念とする新島学園短期大学。古い木造校舎を建て替えた新木造校舎の2階に、その空間はある。
広さ25×16㍍、天井高9㍍。東、南、西の3方の壁全体が細かい模様の透かし彫りで覆われている。近寄って見ると、木製パネルにくりぬかれた不規則な小さな図形がピクセルアートのようだ。
設計した建築家・手塚貴晴さん(60)と由比さん(55)、矢部啓嗣さん(37)は、学園が2017年、30年後の100周年に向けて掲げたビジョン「森を育てる。」から旧約聖書に記された「エデンの園」を連想したという。最初の人間、アダムとイブは禁じられていた知恵の木の実を食べたために追放された。
「追放は悲劇ですが、人の文明の始まりでもある。学生たちが学びの園から知恵を得て巣立っていく物語を重ねた」と貴晴さんは話す。
建築を総合芸術と位置づける貴晴さんは、学園の森のストーリーを自ら描くと決めた。脳裏に浮かんだ空想の情景で、木々に紛れて花や魚などたくさんの生き物が描き込まれている。6㍉角のマス目を単位とし、3面合わせて幅56㍍の大画面に描くのに6カ月かけた。
講堂を2㍍間隔で囲む柱の列は、2㍍内側にもう1列立ち並ぶ。2列の柱ははしご状に連結され、地震の振動を受け止めて吸収する。「森の木々も、柔らかく揺れながら風を受け流していますよね」。透かし彫りした計252枚の合板には、音響効果を考慮して3~5度の傾きをつけた。
講堂は創立記念行事などに使われるほか、学生たちには常時開放され、思い思いに過ごせる場となっている。学園理事長の湯浅康毅さんは「学生が非常に落ち着く場となっているようです」と話す。部外者の見学も受け入れており「何度訪れても新鮮、とおっしゃる方もいます」。
(中山幸穂、写真も)
DATA 設計:手塚建築研究所 《最寄り駅》:北高崎 |
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