ふじのくに茶の都ミュージアム
稜線が白く浮き上がる富士山の手前に、緑の3本線で茶畑を表現した。数本の線を組にした「吹き寄せ」の縦じまは、小堀遠州が提唱した「綺麗さび」を意識。
新たな魅力 静かに語りかける
国内2番目の公立美術館として1933年に開館、「帝冠様式」の建物で知られる京都市京セラ美術館。大がかりな改修を行い2020年に再開、ロゴタイプや館内表示も一新した。
ロゴタイプを担当した大阪芸術大学教授でグラフィックデザイナーの杉崎真之助さん(69)は、「複雑で相反する方向性を統合」する「静かに語るデザイン」をめざしたと説明する。今回の改修にあたり、市はネーミングライツ(命名権)制度を導入し、改修費の約半額をまかなったが、長く親しまれてきた館だけに市民らの間には異論もあった。こうした経緯をふまえた細やかな心配りが必要だったことがうかがえる。
「京モダン」をコンセプトに、端正でシンプルなロゴタイプ。落ち着いたグレーは、古文書や絵画の墨色をイメージし「京墨」と名付けた。「京」と「美」の一部がわずかにカットされ、輝いてみえるのがアクセントだ。
新設したガラス張りのメインエントランス、現代美術を展示するキューブ形の展示棟など改修で新しい魅力が増した館。主張控えめなロゴが、歴史や品格とともにさりげなく伝えている。
◆京都市京セラ美術館 京都市左京区岡崎円勝寺町124(問い合わせは075・771・4334)。午前10時~午後6時(入館は30分前まで)。祝日を除く月曜、年末年始休み。