読んでたのしい、当たってうれしい。

街の十八番

きねや足袋@埼玉県行田市

ランニング足袋が話題に

工場内に立つ中澤貴之さん。白足袋は2160円から、地下足袋は3456円から
工場内に立つ中澤貴之さん。白足袋は2160円から、地下足袋は3456円から
工場内に立つ中澤貴之さん。白足袋は2160円から、地下足袋は3456円から 100年以上前のドイツ製のつま縫いミシンを、自社で部品を手作りするなどして使い続けている

 今もなお約80棟の足袋蔵が残る埼玉県行田市。木綿の産地だったこと、中山道が近くを通ったことなどから、江戸中・後期に旅行用の足袋づくりが盛んになったとされる。

 このまちで90年近く暖簾(のれん)を守るきねや足袋を訪ねると、10人の社員が専用のミシンを駆使して白足袋の各パーツを縫い上げていた。

 蛇腹状に重ねた生地を金型で裁断、縫製し、仕上げに履き心地を整えるなどの全工程は、創業当時と変わらない手作業で、年間約80万足を仕立てる。ベトナムに設けた第2工場では、ベトナム産の天然ゴムをソールに用いた地下足袋も手がけている。

 同社は裸足で走るランナーからの要望に応え、白足袋と地下足袋づくりの技術を応用したランニング用の足袋「MUTEKI」を5年前に開発し、話題になった。今年は、子どもの足の形成のために考案した外履き用の足袋を発売予定だ。3代目の中澤貴之さん(40)は「同じものを作っているだけでなく、長年築いた技術はどんな形でも残していかないと」と話す。

(文・写真 尾島武子)


 ◆埼玉県行田市佐間1の28の49(TEL048・556・6361)。午前9時~午後5時。(土)(日)(祝)(休)休み。吹上駅からバス。

(2018年2月9日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

街の十八番の新着記事

  • 水戸元祖 天狗納豆@水戸 茨城といえば納豆というイメージをつくったのが水戸の「天狗(てんぐ)納豆」。

  • 大和屋@日本橋 東京・日本橋、三越前に店を構えるかつお節専門店。江戸末期、新潟出身の初代が、魚河岸のあった日本橋で商いを始めた。

  • 佐野造船所@東京・潮見 水都・江戸で物流を担ったのは木造船だった。かつて、和船をつくっていた船大工は今はほとんど姿を消した。佐野造船所は、船大工の職人技を代々受け継ぎながら生き延びてきた。

  • 天真正伝香取神道流本部道場@千葉・香取 「エイ」「ヤー!」。勇ましいかけ声と木刀の打ち合う音が響く。千葉県香取市、香取神宮のほど近く。約600年連綿と伝えられてきた古武術、天真正伝(しょうでん)香取神道流の本部道場だ。

新着コラム