読んでたのしい、当たってうれしい。

街の十八番

有職組紐(ゆうそくくみひも) 道明(どうみょう)@上野

和の170色がそろう冠組

色とりどりの帯締めの前に座る道明葵一郎さん。「冠組」の無地は1万5120円
色とりどりの帯締めの前に座る道明葵一郎さん。「冠組」の無地は1万5120円
色とりどりの帯締めの前に座る道明葵一郎さん。「冠組」の無地は1万5120円 2階にある組紐試作のための高台(右)と丸台。全国11カ所で組紐教室も開催

 不忍池近くの繁華街に店舗がある。1652(承応元)年、糸商として創業した。2年前、鉄筋コンクリート5階建てのビルが完成。1級建築士でもある10代目の道明葵(き)一郎さん(39)が「100年続く建物に」と共同設計した。木造建築の意匠を取り入れ、外壁のコンクリートは、木目調の横板を重ねた下見板張りの形状にした。

 1階の店舗は絹糸の光沢と色が美しい帯締めが約500本並ぶ。「冠(かんむり)組」は、主に無地で締めやすく緩みにくい。約170色があり、縹(はなだ)色、瓶覗(かめのぞき)、鴇(とき)色、鶸(ひわ)色、と日本の伝統色名がつけられている。両端の房は少し短めで、華やかに広がり帯を彩る。糸は本社4階で染められ、1日に10~20色、年間で3千色余りになる。染め上げた絹糸が約100人の職人の手に渡り、一つの組み方を専任で手組みする。

 6代目から正倉院に残る組紐の研究や復元を続け、100年近く続けている柄もある。外国人や若者にも組紐に親しんでもらおうと、8代目からネクタイやアクセサリーなどの洋装品にも取り組んでいる。

(文・写真 清水真穂実)


 ◆東京都台東区上野2の11の1(TEL03・3831・3773)。午前10時半~午後6時半((日)(祝)は5時まで)。上野広小路駅。

(2018年1月19日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

街の十八番の新着記事

  • 水戸元祖 天狗納豆@水戸 茨城といえば納豆というイメージをつくったのが水戸の「天狗(てんぐ)納豆」。

  • 大和屋@日本橋 東京・日本橋、三越前に店を構えるかつお節専門店。江戸末期、新潟出身の初代が、魚河岸のあった日本橋で商いを始めた。

  • 佐野造船所@東京・潮見 水都・江戸で物流を担ったのは木造船だった。かつて、和船をつくっていた船大工は今はほとんど姿を消した。佐野造船所は、船大工の職人技を代々受け継ぎながら生き延びてきた。

  • 天真正伝香取神道流本部道場@千葉・香取 「エイ」「ヤー!」。勇ましいかけ声と木刀の打ち合う音が響く。千葉県香取市、香取神宮のほど近く。約600年連綿と伝えられてきた古武術、天真正伝(しょうでん)香取神道流の本部道場だ。

新着コラム