読んでたのしい、当たってうれしい。

街の十八番

堀口だるま店@群馬・高崎

塗りたてのだるま乾かす空っ風

堀口偉男さん(右)と俊さん
堀口偉男さん(右)と俊さん
堀口偉男さん(右)と俊さん 墨汁で仕上げの顔描きをする。高崎だるまの眉は鶴、口ひげは亀を表している。高さ12センチ(800円)~75センチ(3万円)の福入りだるまなどを販売

 200年以上の伝統がある高崎だるま。養蚕が盛んだった群馬県で、高崎市豊岡・八幡地区では冬の内職としてだるま作りが広がり、いまは全国のシェアの大半を占めている。県達磨(だるま)製造協同組合に加盟する工房は約50軒。その一つに堀口だるま店がある。

 今月上旬。店の内外にだるまが所狭しと並んでいた。3代目の堀口偉男(よしお)さん(55)は、7年前に先代の父が病気で倒れ、大手電機メーカーの営業から転身した。息子で4代目の俊(しゅん)さん(32)は一足早く見習いになっていたため、「実は息子のほうが先輩なんだ」と偉男さんは笑う。2人で試行錯誤した濃い赤色と丁寧に描く顔が同店の売りだ。

 色を塗る外作業は親子で、顔描きは偉男さんの妹の香代子さんらが室内で担当。計5人で年間1万個以上を制作している。上州名物の空っ風は身にこたえるが、塗料を乾かすには最適だ。中一日乾かし、完成までに3~4日かかるからこそ、「一つ一つ心を込めて作る」。職人の思いがこもっただるまは、今度は誰かの願いを宿すため人々の手に渡る。

(文・写真 星亜里紗)


 ◆群馬県高崎市八幡町602(TEL027・343・6231)。群馬八幡駅。購入は、1月1日、2日の高崎だるま市やネット通販などで。

(2017年12月22日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

街の十八番の新着記事

  • 水戸元祖 天狗納豆@水戸 茨城といえば納豆というイメージをつくったのが水戸の「天狗(てんぐ)納豆」。

  • 大和屋@日本橋 東京・日本橋、三越前に店を構えるかつお節専門店。江戸末期、新潟出身の初代が、魚河岸のあった日本橋で商いを始めた。

  • 佐野造船所@東京・潮見 水都・江戸で物流を担ったのは木造船だった。かつて、和船をつくっていた船大工は今はほとんど姿を消した。佐野造船所は、船大工の職人技を代々受け継ぎながら生き延びてきた。

  • 天真正伝香取神道流本部道場@千葉・香取 「エイ」「ヤー!」。勇ましいかけ声と木刀の打ち合う音が響く。千葉県香取市、香取神宮のほど近く。約600年連綿と伝えられてきた古武術、天真正伝(しょうでん)香取神道流の本部道場だ。

新着コラム