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街の十八番

東作本店@稲荷町

江戸の釣り文化 伝える和竿(わざお)

(左から時計回りに)松本脩平さん、亮平さん、耕平さんと妻エイ子さん
(左から時計回りに)松本脩平さん、亮平さん、耕平さんと妻エイ子さん
(左から時計回りに)松本脩平さん、亮平さん、耕平さんと妻エイ子さん 5本継ぎ(左)と10本継ぎ(右)のタナゴ竿。タナゴ竿1万円台~、ハゼ竿3万円台~など。オーダーメイドは応相談

 地下鉄稲荷町駅の駅名に残る、旧町名。由来となった下谷(したや)稲荷社(現・下谷神社)はすぐ近くだ。

 1783(天明3)年創業の釣り竿店。深川木場のタナゴ、品川沖のキスなど、江戸っ子の娯楽といえば釣りだった。初代の松本東作が普及させた「江戸和竿」は、持ち運びやすいよう短く切った竹を、何本も継いで使う。現代ではカーボンやグラスファイバー製の万能竿が主流だが、竹独特のしなりや、魚種によって竿を使い分けるのが和竿の醍醐味(だいごみ)だ。「竹は鹿児島、福島、千葉から買い付け、自分たちでも採りにいきます」と7代目の松本耕平さん(67)。3年以上竹を寝かせた後、必要な部分を切り出す「切り組み」、熱を加えてまっすぐにする「火入れ」などを経て、漆塗りで仕上げる。

 作業するのは双子の息子だ。客からの注文を受ける兄・亮平さん(32)は「お客さんからダメ出しがあればとことん直します」。弟・脩平さん(32)は店頭の品を手掛け、店休日には兄と釣りへ。「魚を釣りながら竿の調子を見るのも勉強」。若い心意気が江戸和竿を支える。

(文・写真 中村和歌菜)


 ◆東京都台東区東上野3の32の13(TEL03・3831・4547)。午前10時~午後7時半((土)は5時まで、(祝)は11時~5時)。(日)休み。稲荷町駅。

(2017年10月20日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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