甲府盆地の北、関東山地の南西縁の花崗岩には水晶が分布、甲府周辺では江戸時代から丸玉、印章、帯留めなどに加工されました。明治期をピークに原石の産出は減少しましたが、宝石研磨や貴金属加工技術が発達。鉱山がすべて閉山となった今も、山梨は国内有数のジュエリー産地です。
当館は宝飾業の活性化と宝石に関する知識の普及のため1975年、甲府市に開館しました(2007年に移転)。原石や装身具、彫刻工芸品など2千点以上の展示の中で特に目を引くのが、重さ1トンを超える巨大な水晶です。
初代館長の祖父がブラジルで見つけたものです。県内で水晶が採れなくなると、原石はブラジルから輸入されるようになり、宝石の輸入・卸売業を営んでいた祖父はたびたび現地を訪れていたのです。
水晶は高温・高圧下で岩石から溶け出た二酸化ケイ素が長時間かけ結晶した石英という鉱物の一種です。この大きさになるのにどのぐらい時間がかかったかは不明ですが、時計や携帯電話に使われる人工水晶の育成炉では1300~1400気圧、350~400度で1日に最大1ミリ程度成長するそうです。
二つ以上の結晶が一定の規則性で結合したものを双晶といいます。中でも山梨で多く見つかり珍重されたのが「日本式双晶」です。結合部の角度は必ず約84度で、自然が作ったハート形が美しいです。県内有数の乙女鉱山で採掘されました。
(聞き手・栗原琴江)
《山梨宝石博物館》 山梨県富士河口湖町船津6713(問い合わせは0555・73・3246)。午前9時~午後5時半(11~2月は9時半~5時。入館は30分前まで)。2点は常設展示。600円。(水)休み。
副館長 奥山雄一郎 おくやま・ゆういちろう ITベンチャー勤務を経て2012年入社、20年から現職。併設ショップで扱うジュエリーの商品開発なども担当する |