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情報通信の技術 NTT技術史料館

高品質の光ファイバーを量産化

VAD法で製造された母材。長さ約200×直径12センチ。長さ2千キロの光ファイバーの材料になる
VAD法で製造された母材。長さ約200×直径12センチ。長さ2千キロの光ファイバーの材料になる
VAD法で製造された母材。長さ約200×直径12センチ。長さ2千キロの光ファイバーの材料になる VAD法の製造装置。研究者が自ら設計し装置を作りあげた 海底中継器。下のメタルケーブル用(長さ約370×直径約20センチ)から、上の光ファイバー用(約370×約30センチ)になったことで中継距離が約10倍に伸びた

 当館は、官営からNTTに至る自主開発の歴史的資産を電電公社以降を中心に収集し、約1500点を展示しています。電気通信技術を支える様々な分野の史料のなかで、VAD法により製造された光ファイバー母材と海底ケーブルの中継器は、当館ならではの収蔵品です。

 国際電話やネット、映像中継など私たちが現在使っている通信では、光ファイバーを使った海底ケーブルが重要な役割を担っています。光ファイバー製造にはまず素材の円柱形の塊(母材)をつくり、それを髪の毛の細さまで長く引き伸ばします。光ファイバーは、光が通る部分と光を閉じ込める部分の二層構造からなり、透明な母材をよく見ると、それがわかります。

 母材を大きくすると、継ぎ目のない、長く高品質な光ファイバーの量産化ができるのですが、これを可能にしたのが、1970年代後半から80年代にかけて、NTTとメーカー3社が共同開発したVAD法です。

 回転する石英棒にバーナーでガラス成分のガスを吹きつけ成長させる製法で、従来あった、ガラス管の内部に母材を生成させるなどの製法に比べ、大型化が可能になりました。この技術は15年に、長期間にわたって社会に貢献した歴史的技術革新に贈られるIEEEマイルストーンに認定されました。

 海底ケーブルの中継器は、現在では約100キロごとに設置され信号を増幅します。最大水深8千メートルの深海で故障なく作動するため、高い信頼性が要求されます。

(聞き手・隈部恵)


《NTT技術史料館》 東京都武蔵野市緑町3の9の11 (問い合わせは0422・59・3311)。(木)(金)の午後1時~5時。団体は要予約。無料。6月中は臨時休館。

岩田玲子

史料館担当(学芸員)岩田玲子

いわた・れいこ レスター大学博物館学修士課程修了、大学の研究所展示室勤務を経て、2010年から現職。イベントや企画展など運営全般を担当。

(2020年6月23日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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