売野雅勇さん 「ル・ブルターニュ 神楽坂」のガレット神楽坂
神楽坂に通うようになったのは、ヌーベルバーグの映画が好きで、フランス政府公式の語学学校に併設した映画館を訪れたのがきっかけ。フランスの下町のような、飾らない街の雰囲気が気に入っています。
生麺のもちもちした食感、ベーコンやキノコの具材のバランス、ニンニク、唐辛子、塩加減。Poka Pokaのペペロンチーノはすべてがちょうどいい。シンプルだからこそ、おいしさをダイレクトに感じます。
子どもたちが学校にいる間、仕事が休みの昼に妻と2人でよく行きます。子育ての悩みや、憂いごとがあるときに食べたくなるんです。ペペロンチーノを待っている間、妻と話す時間がとても幸せです。
1人で運営する出版社に午前9時に出社し、午後4時には切り上げます。夕飯作りは主に僕が担当。ペペロンチーノもうまくなりましたが、Poka Pokaで食べるほうがおいしいから、また行きたくなる。
昔に比べ寂れてしまった団地の商店街にPoka Pokaが開店したのは4年前。店って、街の文化を作る力があると思うんです。この店が生活圏内に希望の光を与えてくれた。そのくらいいとしい存在です。
実は3年前まで食べることにまったく興味がなかった。愛煙家で、出張先ではファストフードで済ませていたほど。でも子どものことを考えて禁煙したら、食べることが楽しくなって。先日、出張先の佐渡で食べた寿司(すし)も驚くほどうまかった。今さらだけれど、48歳になって見つけた喜びです。
(聞き手・片山知愛)
しまだ・じゅんいちろう 1976年生まれ。2009年、出版社「夏葉社」を1人で設立。「何度も、読み返される本を。」を理念とし、文学を中心に出版活動を行う。著書に「長い読書」(みすず書房)ほか多数。