秋山寛貴さん(お笑い芸人)
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
デザインの仕事に最先端の感性を採り入れたい思いもあり、長年多くの映画を見てきました。特にデパートのショーウィンドーデザインをしていた若い頃は、きらびやかさや上質さ、エスプリなどを求め、ヨーロッパ映画に刺激を受けました。中でもフェデリコ・フェリーニ監督の作品は、毒を含んだ美しさとユーモアがあって好きです。
この映画は、サーカスの道化師を捉えたドキュメンタリータッチの作品。サーカスのイメージは監督の他作品にもよく登場しますが、少年時代からサーカスや道化師にあこがれを抱き、映画創作の原点にもなったことが伝わってきます。
映画に登場する道化師たちの芸はウィットに富み、ぐいぐいと引き込まれました。監督が訪ねた往年の道化師たちからは、面白さにかけては誰にも負けないという職人意識も感じます。日本の伝統芸とも相通じるような強い個性と芸の切り口の豊かさに感動し、このイラストを描きました。
終盤も印象的です。道化師たちが大騒ぎの舞台を繰り広げた後、そのうちの1人が思い出を語り、哀愁を帯びたトランペットが鳴り響きます。フェリーニ少年が見た道化師は粗野な印象ですが、だんだん洗練されていく。少年期にあこがれた道化師の時代は終わったと物語るようです。
劇中、一般の人々の振る舞いを道化師と重ねる描写も出てきますが、真面目で一生懸命な姿にも不思議と喜劇性がありますね。人のおかしみや人生の喜びをユーモアたっぷりに、時に悲哀を漂わせて表現する。そんな監督の創作姿勢にも共感しています。
(聞き手・木谷恵吏)
監督・出演・共同脚本=フェデリコ・フェリーニ
制作=伊・仏
出演=マヤ・モリン、アニタ・エクバーグほか つじむら・のぶひろ
1938年、大阪府出身。広告のイラストなどを手がける。近刊に「落語キャラクター絵図」(美濃部由紀子著、メイツ出版)。 |