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美博ノート

竹一重切花入 銘「音曲(おんぎょく)」

石水博物館「伊勢商人川喜田家の茶道具名品」

千利休 桃山時代 高さ31.0センチ 石水博物館蔵

 伊勢の豪商・川喜田家歴代当主の収集品を中心に所蔵する石水博物館。博物館登録50年を記念し、コレクションの中核をなす茶道具を展示する。

 季節の花をいけて茶席を飾る花入(はないれ)。本作は、千利休が豊臣秀吉の小田原攻めに同行した際に伊豆・韮山の竹を切り出して作ったとされる。花入「園城寺」「尺八」とともに作られたと、江戸時代に出版された逸話集「茶話指月集」にも記されている。
 花をいける窓を一つくりぬいた「一重切(いちじゅうぎり)」と呼ばれる形。背面には「羽忠休」の文字がある。羽忠は、利休の高弟として茶の湯に深く通じた戦国武将・蒲生氏郷(がもううじさと)のこと。本作は蒲生氏郷に贈られたとされ、津藩主の藤堂家に伝わったのち川喜田家に下賜(かし)された。
 「茶道具は、誰が所持してきたかという来歴も重要な要素になる。本作は名だたる人の手から手にわたった名品」と、学芸課長の龍泉寺由佳さんは話す。 

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