祇園祭礼図
元は巻物の信長の遺品。文化活動の交流がもたらした貴重な資料。
柔らかな白色と、焼成中の窯変(ようへん)がもたらした淡い桃色。「雪の曙(あけぼの)」の銘の通り、積もった雪の上に朝の光がさしこむ情景が浮かぶ。
作者は、伊勢の豪商・川喜田家16代当主の川喜田半泥子(はんでいし)(1878~1963)。財界で活躍する一方、陶芸をはじめ書画や俳句など多彩な趣味を持ち、「東の魯山人、西の半泥子」と称された。
茶碗(ちゃわん)の下部にのぞく鉄色の素地は、半泥子の指の跡。釉薬(ゆうやく)をかける際についた指跡がくっきりと残り、新雪についた足跡を思わせる。口縁部はあえて整えずギザギザのまま。「豪快さと繊細さをあわせ持つ、半泥子流茶碗の代表作」と学芸課長の龍泉寺由佳さんはみる。
指跡もいとわず手がけた茶陶の銘はほぼ全て自身で付けた。型破りとされるが、「財界人のサロンでもあった茶道に精通しながら、制作は『素人だから』と芯を通していた」と龍泉寺さんは説明する。