住宅街の中心に座する「開かれた学校」。校門も教室の壁もない、斬新な小学校はなぜできた?
カラフルな建物が立ち並ぶ幕張ベイタウンを、潮風を感じながら歩く。規則正しいグリッド状の道を何度か曲がると、千葉市立美浜打瀬小学校が姿を現した。
コンクリート打ちっ放しの壁に、半透明で青みがかった格子窓が目にとまる。一見すると美術館のようだ。フェンスや校門がなく、学校の敷地と街の歩道がシームレスにつながっている。
校舎内も開放的な空間が広がっていた。教室を仕切る壁や扉が見あたらない。どこまで歩いても行き止まりがなく、全フロアで回遊できる造りになっている。
「オープンプラン型の学校です」。設計を担当した一人、赤松佳珠子さんは語る。一部屋ごとに仕切られた旧来の教室は教師から児童への一方向の授業に適しているが、児童の多様性に合わせた学習環境をつくることを意識したという。
廊下の代わりに教室と教室の間にあるのは「ワークスペース」。可動式の什器(じゅうき)に制作物が展示されたり、子どもたちがグループで話し合いをしたりする。
壁で囲われた丸ベンチも設置した。休み時間のおしゃべりや、児童が落ち着いて学習する半個室として使うこともできる。
「いろんな場所に行けることで、必ず自分の居場所が見つかる学校にできるといいと考えた」。赤松さんは振り返る。
オープンプラン型は課題もある。教室の壁がない分、授業中の教師や児童の声が隣の教室に響きやすい。壁や天井に吸音材を埋め込み、教室間の一部に透明なガラス壁を設置した。
街に広く開かれ、安全面を心配する声もあった。しかし、学校を建てる際の説明会で「ここは学校をみんなで見守る地域だから閉じないでほしい」との声が住民から挙がり、現在の形に落ち着いた。
井上誠教頭は「周りをマンションに囲まれ、地域の方に見守っていただいていると感じる。他校より不審者情報は少ない」と語る。
校舎の有効活用を模索する研究会を定期的に開き、青空ベンチでの読書などを始めた。いまも使い手が建築を進化させ続けている。
(笹本なつる、写真も)
DATA 設計:シーラカンスアンドアソシエイツ 《最寄り駅》:海浜幕張 |
徒歩約5分のパティスリータルブ(☎043・351・7551)。人気商品の「昆陽(こんよう)」(194円)は千葉県産サツマイモを使用した地元とのコラボレーションスイーツ。なめらかなサツマイモ餡を求肥で包んだ優しい味。午前9時半~午後6時半。火曜休み。