豪雪をしのぐための雁木が残る街に、国内最古級の映画館があるという。いったいどんな建物?
高田駅から雁木の続く通りを徒歩で約6分、「高田世界館」は1911年に芝居小屋として開業した。陸軍の師団司令部が置かれ、街が活気を帯びていた頃だ。
白い壁にアーチ形の窓、曲線と直線が軽快で優美なパラペット(屋根の周りの腰壁)。1、2階合わせて約180席。旧高田藩主の家紋を中央に配した板張りの天井や、2階席の周囲にぐるりと回した木製手すりが目を引く。完成当時は「ルネサンス式白亜の大劇場」と報じられた。
「世界館」は5年後に映画館になった時の名前で、その後「高田東宝映画劇場」「松竹館」「高田大映」などと名称が変わった。
2014年から支配人を務める上野迪音さん(35)は、「歴史の表舞台に立たなかった時代が長かった」と話す。
そのきっかけになったのが、1970年代に成人映画館になったことだ。「子どもは近寄っちゃいけないような場所になった」。しかし一方で「固定的な需要はあり、そのお陰で取り壊されず映画館のまま残ったのでは」。昭和の全盛期、高田地区には映画館が七つあったが、現在残るのは世界館だけだ。
2007年まで営業したが、中越沖地震の影響もあって、取り壊しが検討された。市民の有志や映画ファンらの保存活動が始まり、NPO法人が所有者から無償で譲り受けた。市の補助金や募金で屋根や内装を修繕、11年には国の有形文化財に登録された。
地元出身で、大学・大学院で映画と映画評論を学んだ上野さんは、常勤職員を探していたNPO法人の誘いでUターンした。不定期だった上映を、着任後は週6日、毎日4、5回に。昔ながらの映写機を使ったフィルム上映会や観客参加型の「マサラ上映」などで、関東などから訪れるリピーターもついた。「多くの人に足を運んでもらうために、元芝居小屋という建築をいかしたイベントもやりたい」と知恵を絞っている。
(島貫柚子、写真も)
DATA 設計:野口孝博 《最寄り》高田 |
徒歩9分の百年料亭 宇喜世(☎025・524・2217)の創業は江戸時代末期、当時は魚屋だった。お造り、天ぷらなどを味わえる高田ひめ御膳(1580円)など。[前]11時半~[後]2時、5時半~10時。不定休。