源平の古戦場跡も残る景勝地・屋島。山上に現れた、サーキットのようにクネクネと地をはう建物は何?
高松駅から車で30分、江戸時代まで島だった屋島地区は日本最初の国立公園の一部。最盛期には年間約250万人の観光客が訪れたが、徐々に減少。再活性化へ向け、ホテル跡地に昨年夏オープンしたのが、高松市屋島山上交流拠点施設(やしまーる)だ。
標高約300㍍の屋島山上エリアの西端に位置する敷地は、瀬戸内海や高松市街の眺望に恵まれ、森に囲まれる。設計チーム主宰の周防貴之さん(42)は「場所の持つポテンシャルを最大化する」ことを眼目に置き、複数の屋外広場を含めた敷地全体を一つの建築と考えた。
建物は一周200㍍。上からはサーキットか、メビウスの輪のように見える。幅の広い部分に展示ギャラリーやカフェが配置され、その間を回廊がつなぐ。中庭の、湾のようにえぐれた部分には大小六つの広場を設けた。
中に入ると両側がガラス張りの回廊が蛇行しながら続き、緩やかなアップダウンとともに、目に入る風景が刻々と変化する。建物内にいるのに外と同じ開放感。外の人と思わず目があったりして、境目のなさは時に気まずいぐらいだ。
「昔ながらの素材で新しい景観を作る」との周防さんの構想から、切り妻風の屋根は地元特産の庵治石の瓦でふいた。耐久性があり墓石に多く使われる庵治石が製品となるのは1割に満たない。石材組合と協力し、端材などから板状に加工した約3万枚が、全体のシンプルなデザインを引き立てる。
取材に訪れた1月中旬の平日も、訪れる人の姿は絶えなかった。館長の中條亜希子さん(51)の「建物や景色を見たり、アートを楽しんだり、老若男女問わず多くの人が訪れます」という言葉通り、屋島山上の魅力を新たな形で発信している。
(片野美羽、写真も)
DATA 設計:SUO+Style―A設計共同企業体 《最寄り駅》 屋島駅から車 |
隣接するれいがん茶屋(問い合わせは087・841・9636)は、明治に建てられ改修を重ねてきた茶屋をリノベーションしたカフェ。全面のガラス窓から海を眺めながら食事ができる。れいがん太三郎ハンバーグ(1600円)や屋島ティラミス(1100円)など。午前11時~午後5時(ランチのラストオーダーは1時半)、(火)休み。