新キャンパスを象徴する建物は巨大な逆三角錐(すい)。中に入ると鈍く光る塊が浮遊する……。
大阪のベッドタウン、茨木市にある追手門(おう・て・もん)学院大学茨木総持寺キャンパスは2019年、家電工場跡地を再開発してできた。25年には約2キロ離れた茨木安威キャンパスに代わり、メインキャンパスになる。駅から徒歩圏、地域に開かれた大学を目ざす新キャンパスの中心がアカデミックアークだ。
上から見るとほぼ正三角形。接地面で長さ50メートルの1辺は上に向かって広がり、最上部は130メートル。大地に突き刺さる三角錐だ。「学生の心に残る強い建物」という大学側の要望に、三菱地所設計の須部恭浩さん(50)が応えた。
「広い軒下が人を招き入れるような風景ができた。大きさの割に小さく見えて、町が見通せる」と須部さん。周辺の住宅や道路への圧迫感を抑え、軒下は災害時の拠点としても使える。
1年次全員と3学部の計約3800人が使う教室、図書館、ホールがこの1棟に集約されている。1階は約千人収容、ふだんは250以上の自習席を備えるホールを中心に特別教室や書店、カフェ。2~4階は吹き抜けを囲むように教室が並び、中央には図書館がまるで宙に浮かんでいるよう。ブリッジで結ばれた、総延長約1キロに及ぶ回廊の壁面書架にも本が並び、カウンター席がある。
集約したねらいは「にぎわい」。「そこにいけば人がいる中心性が必要と考えた」と須部さん。工夫の一つが、ホールの残響時間。学校としては長めの3秒に設定し、「ワイワイ、ガヤガヤ、カフェみたい」な居心地のよさを実現した。もう一つは教室や回廊、図書館などに多数設置したコンセント。PCや携帯を充電できるようにすることで快適に過ごすことができ、人が集まるきっかけとなっている。
ねらい通り館内はどこも、語り合ったり課題に取り組んだりする学生たちで活気がある。真銅(しん・どう)正宏学長(60)は「全体が図書館であり、教室でもあり、学生の居場所だ」と語る。
(深山亜耶、写真も)
DATA 設計:三菱地所設計 《最寄り駅》:JR総持寺 |
キャンパス内食堂棟にある追手門学院食堂は一般にも開放されている。和食を中心に取りそろえ、釜で炊いたご飯が好評だ。人気の唐揚げ定食は550円。午前8時半~10時、11時~午後3時(授業や行事の都合で変更あり)。原則(土)(日)(祝)休み。