よくある2階建ての建物から飛び出すような三角屋根。リフォームでこれを取り付けた思いとは?
2013年に児童養護施設「子供の家」に副施設長として赴任した早川悟司施設長(53)は、築20年ほどだった建物の状況に頭を悩ませた。
3歳から22歳まで約35人が3棟6ユニットに分かれて暮らす。旧来の集団生活型ではなく、少人数で家庭的な養護を早くから導入した施設だが、カビや汚れがしみつき、破損箇所も。「子供たちは好きで施設に入るのではなく、だいたいは泣きながらやってくる。せめてアットホームで安心できる環境で迎えたかった」
デザインを担当した建築家・伊藤潤一さん(51)は、子供と建築にかかわる活動を通して早川さんと知り合い、別の施設改修も手がけていた。「ここはあなたの家」というメッセージを子供たちに伝えるため、「子供の家」のロゴマークにある、三角屋根の家をデザインに採り入れた。
各棟に二つあるユニットごとの玄関は三角屋根の覆いが目を引く。覆いの左右は素通しで腰掛けられ、子供たちの「井戸端会議」の場にもなる。伊藤さんは「胸に抱えていることをだれかに話せる場所があればと考えた」と話す。三角屋根のモチーフはリビングルームの内装、個室の入り口などにもある。
小学3年で入所した初日、「ここ気に入った」と満面の笑みを浮かべたというサクラさん(仮名)は今中学3年。「自宅に住んでる感(がある)」と話す。アイドルのポスターを飾り、きちんと整頓した部屋に案内する様子を、伊藤さんはうれしそうに見守った。
各ユニットには必ず一つ、予備の居室を設けてある。社会へ巣立っていった子供たちの「実家」でもありたいと早川さんは願っている。
(田中沙織)
DATA 設計(リノベーション):伊藤潤一建築都市設計事務所 《最寄り駅》:清瀬 |
清瀬駅から徒歩8分のベーカリーショップどんぐり(松山工房)(問い合わせは042・492・8059)には、種類豊富な総菜パンや菓子パンなどが並ぶ。おすすめは、シュガーレーズン(110円)やキャラクターぱん(120円)、あんぱん(100円)など。社会福祉法人椎の木会が運営。午前10時~午後4時半(売り切れ次第終了)、(土)(日)(祝)休み
児童養護施設 子供の家
https://www.kiyose-kodomonoie.com/
伊藤潤一建築都市設計事務所
https://ito-jun.com/
ベーカリーショップどんぐり(松山工房)
http://donguri-k.com/group/b-donguri.html