木造世界最大級 地域に溶け込む
田んぼや住宅に囲まれた広場に置かれたゆで卵。ニプロハチ公ドーム(大館樹海ドーム)の設計を手がけた伊東豊雄さん(81)は、「球形に比べ難易度は格段に上がったが、この卵形にすることで周囲の環境に溶け込めた」と話す。日本海側から一年中吹き付ける風を受け流す意味でも適した形だったという。
内部は両翼90㍍、センター120㍍の野球場が広がる。圧巻は、長径178㍍、短径157㍍、最大高さ52㍍のドームを格子状に支える木製のはり。樹齢60年以上の秋田杉約2万5千本を使った、世界でも例のない規模だ。「完成当初は杉の香りがすごかった」と伊東さんは振り返る。
杉は従来強度の点で問題があるとされていたが、1枚ずつ変形しにくさを測定した板材から大断面集成材を製造、強度を確保した。
完成から25年、高校などのアマチュア野球、サッカーなどスポーツの試合や練習、大規模イベントに使われてきたが、個人利用も多いという。1時間3150円(一般、照明料別)、24時間利用可能で、日単位の稼働率は96%。冬季は雪に閉ざされる地域にあって「すっかり根付いた施設」と管理する大館市文教振興事業団の阿部友康さん(60)は話す。
ドーム屋根と地上の間はポリカーボネート張りで、ドームに続く公園や林を散歩がてら、中の様子をうかがうことができる。夜間にはドームを覆うガラス繊維素材を通した照明が温かく周囲を照らす。
10月には3年ぶりに「本場大館きりたんぽまつり」が開かれ、約10万人が訪れた。阿部さんは「地域の人々が誇れるイベントをこれからも開催したい」と話した。
(片野美羽、写真も)
DATA 設計:伊東豊雄建築設計事務所、竹中工務店 |
大館駅からバスで約20分のあきた味坐(みくら)(☎0186・57・8902)では、名産の比内地鶏やきりたんぽなどの郷土料理を味わえる。比内地鶏親子丼(1200円)や大館さくら豚カツ丼(1300円)など。午前11時半~午後2時、5時~9時(ラストオーダーは8時)。[日]、第2・4[月]休み。