若狭湾に臨む三方湖畔に2018年に開館した当館は、年縞をテーマにした世界初の博物館です。
年縞とは、長い年月をかけて湖底や海底に堆積した土などにみられるしま模様のことで、1年に1層形成されます。年縞ができる場所は地形の条件から限られ、1993年に三方五湖の一つ水月湖の湖底に、現在まで連続する7万年分の年縞が存在することが確認されました。
数回にわたり採取、調査が行われ、当館では45㍍に及ぶ7万年分の年縞を厚さ20分の1㍉にスライスしてガラス板に貼り付け、横長に展示しています。
写真上は一番新しい部分で、右から左へ1600年ごろから2017年までにあたります。春から秋はプランクトンの死骸が多く暗い色、秋から冬は湖水の鉄分から生じる鉱物などの明るい色になり、1年で平均0・7㍉の層ができます。
右から4分の1あたり、黒い線がほかより濃く見えるのは、1664年の浦見川開削による影響と考えられます。62年にマグニチュード7・6の寛文地震で周辺が水没、排水路を開削した結果、一時的に多量の海水が流れ込み硫黄に富んだ黒い層が現れました。
年縞に含まれる花粉や火山灰などを調べることで、過去の気候変動や地殻変動を知る手がかりにもなります。また層の数から正確な年代がわかるため、考古学で出土物の年代を測定する世界標準の「ものさし」となっています。
イスラエルの死海の年縞は2019年に、水位の低下でかつての湖底が地上に露出した崖から採取しました。死海のように乾燥した地域では乾期に湖水が蒸発して炭酸カルシウムが析出して明るい色の層になり、雨期には土壌の流入で暗い色の層ができています。
(聞き手・片山知愛)
《福井県年縞博物館》 福井県若狭町鳥浜122の12の1(問い合わせは0770・45・0456)。(前)9時~(後)5時(入館は30分前まで)。500円。(火)((祝)の場合は翌日)、年末年始休み。
主任 北川 淳子 学芸員 きたがわ・じゅんこ 静岡大学理学部生物科卒。福井県里山里海湖研究所主任研究員を経て、2018年から現職。専門は植物考古学。 |