読んでたのしい、当たってうれしい。

幅允孝(はば・よしたか)さん
通しあげそば鶴 久保とうふさんの「油揚げ焼いたん」

 東京と京都の2拠点生活を始めて2年。京都に地縁はなかったのですが、今の土地を見つけた時、前々から好きなそば鶴が近いと分かり、「これなら生きていけるな」と。最後に背中を押してくれた、大切な存在です。
 まずオーダーするのが「油揚げ焼いたん」。地元の豆腐店で揚げる正方形の油揚げにネギとショウガがのり、しょうゆも適量垂らしてあります。外かりっ、中ふわっ。豆腐の食感が残っていてジューシーで、中にこもった空気までやさしくておいしい。この一皿が今日も食べちゃうぞというスイッチになるんです。
 先代の両親から店を継いだ3兄妹の長男・シゲさんがつける熱かんと油揚げの組み合わせは絶妙。料理担当の次男・ヒデさんが作るハムカツやネギの天ぷらも超絶おいしい。妹のまーちゃんはいつもニコニコ、サービスの天才。締めはその日の気分で、夏はスダチそば、冬はナスのあんかけそば。胃袋に聞きながら、食べたい物を食べたいだけ。
 そば鶴の良さは、普通の物が普通に潔くおいしい。真っ当に作られておいしいって、実は特別なことなんだなと。どんな時も気持ちよく迎えてくれて、実家みたいに安心できる。こんな素敵な店が近所とは、引っ越してきたかいがあったものです。
(聞き手・片山知愛)
 
 ◆京都市左京区高野玉岡町74(☎075・721・2488)。600円。午前11時半~午後3時、午後5時半~10時。土曜、日曜、祝日は午前11時半~午後10時(ラストオーダーはそれぞれ30分前まで、いずれもそばが売り切れ次第終了)。原則月曜と第2、4火曜休み。 

  はば・よしたか ブックディレクター。公共図書館や病院、学校など、人が集う図書施設の選書や監修を手がける。近年では「こども本の森 中之島」「早稲田大学国際文学館〈村上春樹ライブラリー〉」など。私設図書室と喫茶を併設した「鈍考/喫茶芳」運営。

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