「ピキヌー」のチキンカリ― 紀香姉さんと通いつめた、絶妙の風味
年間360食はカレーを食べる僕の中で、このレトルトのミャンマーカレーは圧倒的1位。ピーナツオイルの風味が利いていて、トマトの酸味と玉ねぎの甘み、ごろっと入った手羽元が「どストライク」です。
このカレーを手がける料理研究家の保芦(ほあし)ヒロスケさんは、旅で訪れたミャンマーに思いを寄せて、長年支援活動を続けています。僕は作り手の気持ちが伝わってくるような、人柄込みでカレーを好きになるタイプ。気持ちなくして感動はない。歌舞伎に対してもそう思っています。
自主公演では毎回オリジナルのカレーを作って販売しています。初回は自分の好みに寄せて辛くし過ぎ、大量の在庫が……。反省した笑い話です。ただ、演じる上では自分の感覚を譲れない時も。僕は曽祖父・六代目尾上菊五郎の「春興鏡獅子(しゅんきょうかがみじし)」の映像を見て歌舞伎を志しました。動的に踊りつつ、静かな情熱をみせるところにひかれたのも、僕自身の感覚といえます。
レトルトカレーは二つの味を合いがけにするのもお薦め。互いの味がより引き立って、役者の組み合わせの妙が生まれる歌舞伎の醍醐(だいご)味に通じます。今月は7年ぶりに中村壱太郎さんと「二人椀久(ににんわんきゅう)」を踊ります。カレーではないですが、熟成した味わいをお見せしますよ。
(聞き手・中村さやか)
◆1箱250グラム(1~2食分)。公式ホームページ(https://hirosuke-curry.com/)やスーパー「北野エース」などで販売。価格は購入場所で異なり千円前後。HIRO TOKYO(☎0422・45・5535)。写真は調理例。
おのえ・うこん 歌舞伎俳優。1992年東京都生まれ。26日まで、東京・銀座の歌舞伎座「壽(ことぶき) 初春大歌舞伎」に出演中。舞踊「二人椀久」では、豪商の椀屋久兵衛(尾上右近)と傾城の松山太夫(中村壱太郎)による、はかなく幻想的な舞台をみせる。「寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)」「大富豪同心」にも出演。