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私の描くグッとムービー

野村たかあきさん(絵本作家)
「なごり雪」(2002年)

中年よ、もっと故郷を思え

 野村たかあきさん「なごり雪」(2002年)

 

 かぐや姫が歌った「なごり雪」(1974年)は、青春時代の思い出の曲。発表から30年近く経ち、大林監督が映画にしたというので、すぐに見ました。

 歌では東京だけど、この映画は大分県臼杵市が舞台。28年前、臼杵を出て東京の大学に進学した主人公、祐作と、就職のために群馬から上京した昔の私が重なります。物語は、そんな祐作のもとにかかってきた地元の旧友、水田の電話から始まります。水田の妻で、学生時代、祐作に思いを寄せていた雪子が危篤だという知らせでした。

 しかし、久しぶりに故郷に帰ってきた祐作は、浮かない表情。再会した水田も、町の景色も変わらないのに、どこかで今の自分との距離を感じていたのではないでしょうか。

 印象的だったのが、祐作が上京する前、雪子が雪に見立てた発泡ビーズを夜空に飛ばす場面。「雪が降るといいことがある」と信じ、温暖な九州の町に雪を降らせようとしたのです。それを祐作と水田も一緒に眺める。でも、この頃から既に3人の心はバラバラなってしまっていたように感じました。

 私は結局群馬に戻り、創作活動を続けています。一方、祐作のように目的とか思いを持たないまま都会で暮らしている人って、この世代に多いと思います。そんな50~60代に向けた、「故郷を忘れんなよ」という大林監督のメッセージなんだと受け止めました。

聞き手・永井美帆

 

  監督・共同脚本=大林宣彦
   主題歌=伊勢正三
   出演=三浦友和、須藤温子、ベンガルほか
のむら・たかあき
 1949年、前橋市生まれ。90年、「おじいちゃんのまち」(講談社)で絵本にっぽん賞を受賞。近著に「あめふりうります」(同)。
(2014年8月8日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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