「アフター・ヤン」(2021年) 「テクノ」と呼ばれる人型ロボットのヤン、中国系の養女・ミカ、養父母が暮らす近未来が舞台です。
もともとホラー映画が大好き。なかでも本作は映像の美しさと内容のエグさにひかれて、20回は見たでしょうか。ただ怖いだけではなく、恋愛やミステリーの要素も楽しめて、中毒性が高い作品です。好きなシーンがたくさんあって、とくに、主人公・ダニーの足から草が生えてくる場面は、白昼夢のような表現が素晴らしいのでぜひ注目してほしいです。
もし何の前情報もなく初めてこの作品を見る人がいたら、ラストをどう感じたか聞いてみたいですね。家族を失い、恋人ともうまくいかず、最悪な状況のダニー。彼女にとって、ホルガ村という新しい依存先が見つかったことは「幸せな結末」と言えるのでは……と私は思いました。日常の中のふとした瞬間を「怖い」と感じるか、「幸せ」と感じるかはその人次第。私は現在、日常をテーマにした作品を描いていますが、以前にはホラーを手がけたこともあります。日常とホラーは一見全く違うジャンルのようですが、実は大きな違いは無いと思っています。
イラストは作品のイメージです。中央はダニー、左側の3人はダニーの家族。彼らに巻き付いているのは、一酸化炭素中毒で亡くなった時に使用されていたチューブ。右側の4人はホルガ村の住人たちです。画材は水彩紙に色えんぴつで線を描き、透明水彩で着色しています。
アリ・アスター監督は他の作品も見て大好きになりました。新作「ボーはおそれている」は、予想をさらに超えた「悪夢」をたっぷり摂取できて、楽しかったです。
(聞き手・高田倫子)
監督=アリ・アスター
製作国=米 出演=フローレンス・ピュー、ジャック・レイナーほか
いな・そらほ 静岡県出身。2017年デビュー。日常をテーマにした「特別じゃない日」シリーズの新作「思い出の映画館」(実業之日本社)が発売中。
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「特別じゃない日 思い出の映画館」実業之日本社HP
https://www.j-n.co.jp/books/978-4-408-64122-5/