秋山寛貴さん(お笑い芸人)
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
生理は不浄なものと認識されているインドで、安価で衛生的な生理用品の開発と普及に人生を捧げた男性のサクセスストーリー。物作りの人間として大切なことを気づかせてくれた感動作です。
主人公である男性が女性のセンシティブな問題に取り組もうとした原動力。それは愛する人とどんなときでも一緒にいられる世の中にしたいという衝動以外のなにものでもないんです。残念ながら、その思いは最愛の妻に伝わりそうで伝わらず、しだいに家族、友人、地域の人々からいわれのない偏見や容赦ない差別を受けるように。それでも、妻の健康維持と笑顔を取り戻すため、彼は研究に打ち込むんですね。幾度となく苦境に立たされながらも、ひたすら真摯に向き合う姿勢。これには頭が下がる思いでした。さらに敬服したのはどこまでも無欲なところ。金もうけよりも、多くの女性が安全で快適に過ごせる日常の定着、男性と同等に働ける環境づくりを優先したんです。これまで僕がもっていた、物作りにブランディングやマーケティングは必要不可欠という観念は正しいのか。男女の「らしさ」を美徳としてきた社会でいいのか。考え直す必要性を感じましたね。
僕自身の仕事とつながったからか、この映画を見てから数年経った今でも様々なシーンやセリフが脳裏に焼き付いています。イラストはその記憶から浮かんだものをカラフルにちりばめました。存在感を放つのは、誤った慣習から女性を救うために思案する主人公。慈悲深い菩薩のような姿で、生理と深い関わりがあるとされる月の満ち欠けに思いをはせています。
(聞き手:陣代雅子)
監督・脚本=R・バールキ
製作=インド
出演=アクシャイ・クマール、ソーナム・カプール、ラーディカー・アープテーほか たきざわ・なおき
2006年に「イッセイミヤケ」から独立。同年、デザイン会社を設立。18年、自身が運営するフィッティングルームをオープン。 |