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私の描くグッとムービー

唐橋充さん(俳優・イラストレーター)
「ペネロピ」(2006年)

豚鼻の少女 外の世界へ立ち向かう

唐橋充さん(俳優・イラストレーター) 「ペネロピ」(2006年)

 主人公の少女ペネロピは、豚の鼻と耳がついて生まれてきた。魔女が先祖に呪いをかけたせいで。母親が「なんて可哀想な子」って幽閉生活を送らせる中、ペネロピと父親は、それほど悲観的に振る舞わない。家族3人が、悲劇の底に落ちないっていうのが好きです。

 呪いを解くために運命の人を探すペネロピ。だけどマジックミラー越しのお見合いはいつも失敗。クスッと笑えるシーンだからこそ、「やっぱりこの顔じゃダメなんだ」と傷つくのがいとおしくて。

 恋に落ちた相手、マックスは「いつかは外へ出なきゃ」とペネロピを諭すものの、「本当は外の世界も面白くない」と言い直す。しかし、ペネロピはマフラーで鼻を隠しつつ、自分を奮い立たせて家出する。この場面を絵に描きました。彼が悲観するその世界へ立ち向かう姿に、女性らしい強さを感じたんです。いっぽう両親は、大きな屋敷で娘からの電話をひたすら待つ。でも自宅の電話機が多すぎて、鳴ってもどこだかわからない。切なさには笑いが隠れている。そんな心の持ちようが現実にも大事だと思える。

 初めて見たのは、演劇の宣伝美術を担当していたころ。映画は色鮮やかなのに、この試写のパンフレットはモチーフが黒いシルエットだけで表現されていた。白黒は想像もふくらむし、主人公が「自分の色」を探す物語ともぴったり。以来、僕は白黒の絵を好んで描くように。アートワークの道筋をガラリと変えてくれた作品です。

聞き手・石井広子

 

  監督=マーク・パランスキー
  製作=英
  出演=クリスティーナ・リッチ、ジェームズ・マカボイ、キャサリン・オハラほか
からはし・みつる
 1977年生まれ。「仮面ライダー555」で俳優デビュー。現在放映中の番組「宇宙戦隊キュウレンジャー」のイラストの制作なども。
http://tokyo-village.net
(2017年5月19日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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