秋山寛貴さん(お笑い芸人)
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
|
女性の欲望とコンプレックスの描き方が半端でない作品です。私が思春期に抱えていた夢や悩みも盛り込まれている。
12歳の少女ヴィオレッタは、写真家の母親アンナにモデルになるよう誘われます。戸惑いつつも撮られる快感に目覚め、女を開花させていく。母親の要求は徐々にエスカレート。黒のガーターベルトや赤いルージュで妖しい色香を漂わせ、大胆なポーズを取るように。けれど、母親に利用される不満から反発するようになります。
私も、モデルをしていたのでわかります。女の子が自信をつけていくところ。母親は若さ、美しさ、才能にコンプレックスがある。母親の心理もわかるし、愛(いと)しい。持ちつ持たれつの共依存と葛藤。私自身、高校生の頃、母とバトルを経験しました。メイクはおろか、まゆげ1本抜いても怒られた。三姉妹の長女で期待も大きかったのでしょう。上京し母と離れてから、よく話すようになりました。
幼いヴィオレッタは最後まで、母親への憎しみと愛のため、混乱した。監督自身の少女期の体験を元にした映画です。
このような、心の闇を描いた作品にひかれます。仕事でも人の裸の状態が見たいから。写真に刺繡(ししゅう)を施して人物を表現する私のシリーズ企画の「美女採集」では、女性の内面をえぐり、変身に挑ませる私はS。「男糸DANSHI」では、男の人の格好よさを引き出す補佐役の私はM。人物の本質を浮き彫りにする点は同じです。
聞き手・由衛辰寿
監督・共同脚本=エバ・イオネスコ
製作=仏
出演=イザベル・ユペール、アナマリア・バルトロメイ、ドニ・ラバンほか きよかわ・あさみ
創作は映像、衣装、広告、空間デザインにも及ぶ。絵本「狼王ロボ」が5月発売。7月から福井県あわら市・金津創作の森で個展。 |