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私の描くグッとムービー

清川あさみさん(アーティスト)
「ヴィオレッタ」(2011年)

女性の欲望・劣等感、余す所なく

 清川あさみさん(アーティスト) 「ヴィオレッタ」(2011年)

 

 女性の欲望とコンプレックスの描き方が半端でない作品です。私が思春期に抱えていた夢や悩みも盛り込まれている。

 12歳の少女ヴィオレッタは、写真家の母親アンナにモデルになるよう誘われます。戸惑いつつも撮られる快感に目覚め、女を開花させていく。母親の要求は徐々にエスカレート。黒のガーターベルトや赤いルージュで妖しい色香を漂わせ、大胆なポーズを取るように。けれど、母親に利用される不満から反発するようになります。

 私も、モデルをしていたのでわかります。女の子が自信をつけていくところ。母親は若さ、美しさ、才能にコンプレックスがある。母親の心理もわかるし、愛(いと)しい。持ちつ持たれつの共依存と葛藤。私自身、高校生の頃、母とバトルを経験しました。メイクはおろか、まゆげ1本抜いても怒られた。三姉妹の長女で期待も大きかったのでしょう。上京し母と離れてから、よく話すようになりました。

 幼いヴィオレッタは最後まで、母親への憎しみと愛のため、混乱した。監督自身の少女期の体験を元にした映画です。

 このような、心の闇を描いた作品にひかれます。仕事でも人の裸の状態が見たいから。写真に刺繡(ししゅう)を施して人物を表現する私のシリーズ企画の「美女採集」では、女性の内面をえぐり、変身に挑ませる私はS。「男糸DANSHI」では、男の人の格好よさを引き出す補佐役の私はM。人物の本質を浮き彫りにする点は同じです。

聞き手・由衛辰寿

 

  監督・共同脚本=エバ・イオネスコ
   製作=仏
   出演=イザベル・ユペール、アナマリア・バルトロメイ、ドニ・ラバンほか
きよかわ・あさみ
 創作は映像、衣装、広告、空間デザインにも及ぶ。絵本「狼王ロボ」が5月発売。7月から福井県あわら市・金津創作の森で個展。
(2015年4月10日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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