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アートリップ

フルーツバス停
吉次(よしつぐ)工業 作(長崎県諫早市)

リアルさ追求 町のシンボル

井崎停留所の待合所。幅3・8×奥行き3・3×高さ3・5メートル。<br>中は約10人が座れる
井崎停留所の待合所。幅3・8×奥行き3・3×高さ3・5メートル。
中は約10人が座れる

 冬の日差しを浴びた海の向こうに、雲仙岳がかすんで見えた。

 長崎県諫早市の小長井駅前から県営バスで海沿いの国道を2分。井崎停留所には道を挟んで巨大なイチゴとメロンが並ぶ。

 地元の特産品をかたどったコンクリートとモルタル製の待合所だ。

 「ときめきフルーツバス停通り」と名付けられた一帯に、ミカン、スイカ、トマトを加えた5種計16基が点在する。

 きっかけは1990年開催の「長崎旅博覧会」。観光客を和ませようと、89年度末に小長井町(現・諫早市小長井町)がミカンの待合所を設置。リアルさが好評を博し、約10年かけて増設した。

 施工を担当した吉次工業の吉次良治さん(64)は、制作にあたり実物をつぶさに観察。イチゴは表面の産毛のようなものまで再現した。

 「技術屋として本物らしさを追求した。入り口ももっと小さくしたかったくらいです」

 井崎停留所近くの田んぼでは、地域の任意団体が花を育てている。ここ数年、インスタグラムなどに写真を載せたいと訪れる人が急増。季節の花と合わせて撮影できるようにとの計らいで、3月下旬からは菜の花が見頃の予定だ。

 住民により歌と踊りも作られ、こども園の園児や地域の人たちが行事で披露するなど、フルーツバス停を軸に活動が広がる。

 ミカンの待合所にいた毎隈千惠子さん(72)は、「出来た時はうれしかった。地域のシンボルだね」と話すと、バスに乗り込んで行った。

(小森風美、写真も)

 ときめきフルーツバス停通り

 国道207号を中心とした、フルーツバス停がある通りの通称。殿崎―阿弥陀崎間の7キロほどに14基、別路線に2基がある。


ぶらり発見

アートリップ 長崎県営バス「阿弥陀崎」停留所から徒歩2分の小長井町漁協直売店(問い合わせは0957・34・2336)では、11~3月ごろ、カキ焼き小屋を営業。直売店で買った食材を炭火焼きで食べられる=写真。カキ焼き台使用料300円。

 JR長崎線の小長井駅から車で15分の山茶花高原ピクニックパーク(問い合わせは34・4333)では、観覧車のほか計15種の遊具(有料)で遊べる。フルーツバス停のストラップなどグッズも販売。原則(火)休み。

(2020年2月4日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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