駿河湾の美しい季節がやってきました。フェリーからのぞむ真っ白な富士山は、青空とのコントラストが鮮やか。伊豆半島には金山やなまこ壁など歴史を伝える名所だけでなく、メロンやジェラートなどおいしいスイーツもたっぷり。河津桜が花開く初春にむけた駿河湾の魅力を味わおうと「旅するカナフキン」が静岡を訪れました。
◆県道223(ふじさん)
清水港(静岡市)を出発した駿河湾フェリー。羽衣伝説の舞台として有名な「三保の松原」が遠のき、駿河湾を東に向けて進むにつれて、デッキから見える富士山が大きく迫ってきます。観光客がデッキ上に集まり、スマートフォンを構え始めました。
デッキから見える富士山
デッキでの撮影スポットは、「県道223(ふじさん)」と記された青い六角形の標識前。富士山の世界遺産登録に合わせて、静岡県が2013年、土肥港(伊豆市)と清水港を75分で結ぶ駿河湾フェリーの航路を海上県道として認定したいきさつがあるそうです。
1隻で1日4往復するフェリーは片道大人2千円。500円の追加料金を払えば、眺めの良い2階特別室を使うこともできます。船内の売店は旅行者を喜ばせるレアグッズが並んでいます。一押しは「駿河湾ジェラートNo223」。本店が静岡県藤枝市にあり、京都や東京・青山にも店を構える日本茶店「ななや」とのコラボ商品で、濃厚なミルク味が口のなかに広がりました。
駿河湾ジェラートNo223
売店では「223ばうむ(ふじさんばうむ)」というバームクーヘンや、県道223のステッカーなど、富士山づくし。県道223の船旅は、目が覚めるような潮風をときどき受けながら、あっという間に土肥港に到着してしまいました。
《駿河湾フェリー》
・定期点検のため2025年1月7日~2月6日は運休します
・荒天で欠航することもあり、乗船の際は公式ホームページで運航情報をご確認ください
・2024年11月1日から第4便の運航は、金・土・日曜日、祝日(振替休日含む)および繁忙期のみとなりました
・このコラムの最後にフェリーのチケットプレゼント情報があります
◆黄金KAIDO
土肥につくと、江戸時代からのにぎわいの歴史を感じさせられました。土肥港から15分歩くと「土肥金山」に到着します。江戸時代には、佐渡金山につぐ生産量を誇り、40トンの金が産出されたと推定されています。金山は1965年に閉山しましたが、観光坑道はパワースポットとして人気を集め、砂金取り体験も楽しめます。黄金館には、250キロもある巨大な金塊が展示されていました。ギネスで世界一の金塊と認定されているそうです。
250キロの金塊
かつて土肥金山でとれた金は、船で徳川家康が暮らす駿府に運ばれたと伝えられています。駿河湾フェリーで渡ってきた「県道223号線」は、まさに金を運ぶ海の道だったそうです。時代は違っても、「黄金KAIDO」として通じているように感じさせられます。
金山の営みを思い浮かべながら、近くの料理店「LOQUAT西伊豆」でランチのコースをいただきました。「地元の食材をいかしています」と出していただいたのは、サツマイモのスープやシラスのパスタ。地元の養蜂農家の非加熱はちみつを隠し味にしたミルクジェラート「季節のミルク」のまろやかな香りにも西伊豆の豊かさを感じました。
LOQUAT西伊豆のジェラート
夕方を迎え、海沿いの「テラッセオレンジトイ」へ足を運びました。24年7月にできたばかりの施設です。ふだんは遊び、くつろぎ、地元の味覚を味わうことができる観光施設。有事には、海で遊ぶ観光客や地域の人たちを津波の脅威から守る避難タワーになるそうです。
「テラッセ(Terrasse)」は絶景を楽しめるテラスや災害時に灯台の様に生命を守り照らすといった意味を込め、「オレンジ(Orange)」は美しい夕陽や名産であるミカンの暖かいイメージ、「トイ(toi)」はヨーロッパの「toi toi toi」という「幸運を祈る」というおまじないを重ねていると知りました。
テラッセオレンジトイ
《黄金KAIDO》
・新潟、長野、山梨、静岡4県は観光や食の分野で連携
・徳川家康が開発に力を注いだ佐渡金山(新潟)と土肥金山(静岡)、両者を結ぶ道中に湯之奥金山(山梨)、金鶏金山(長野)があり、結ぶルートを黄金KAIDOと名付けている
◆癒やしスポット、パワースポットも
西伊豆から車で1時間あまり。伊豆半島の南部には、癒やしスポットやパワースポットがあちこちにありました。
伊豆急下田駅から徒歩1分の寝姿山は、絶景と縁結びの名所として知られています。遠くから見ると女性の寝姿に見えるという寝姿山の山頂には、下田ロープウェイで約3分。下田港の全景を横目にしながら遊歩道を進むと、愛染堂がありました。ここにあるのが「和み玉」です。
和み玉投げ
山腹に「和」と刻印された大きな岩があり、その手前に二つの輪が掲げられています。手元の丸い石(和み玉)を投げて、輪に通して岩に当たるとみんなとの関係が良好になり、2人で投げる時は同時に左右の輪を通して岩に和み玉があたると2人の「和」が実現するといういわれがあります。
「どうでした?」。地元の人から声をかけられ、「ダメでした」と答えると、「笑顔になりましたか?」と言われました。戸惑っていると「和み玉で笑ったことが思い出になる。それを願っているんですよ」と。ほっこりとした気分で、散策していると素敵なカフェを見つけました。
山頂にあるTHE ROYAL HOUSE CAFEは木で造られた繊細な装飾が印象的。テラスからは下田湾が見渡せる絶好のロケーションで、心安らぐ時間を過ごせました。
伊豆急下田から車で15分ほどのところには、パワースポットとして有名な竜宮窟があります。直径50メートルほどの天窓が広がる洞窟で、崖を階段でのぼって上から洞窟を見下ろすと、ハート形の地形が出現するという自然の造形美が広がります。隆起した太古の地層が波で長年削られ、天井の一部が崩れて天窓ができたと伝えられています。
竜宮窟のハート地形
◆スイーツや桜の名所も
下田市に隣接する南伊豆町は、地元産品の宝庫でした。扇屋製菓カフェのメロンスイーツは絶品です。南伊豆町は温暖な気候に恵まれているだけでなく、温泉の熱を活かしたメロンの温室栽培が大正時代からさかんな地域です。
この「温泉メロン」を贅沢に使った人気のショートケーキは、メロンの果実を贅沢にトッピングし、アーモンドペーストを使ったスポンジケーキの間に特製の生クリームがたっぷり入っていました。
メロンショートケーキ
南伊豆町では、2月中旬~3月上旬になると河津桜が咲き誇ります。下賀茂温泉を流れる青野川沿いには約800本の桜並木があり、25年2月1日から3月10日まで開かれる「みなみの桜と菜の花まつり」では、夜桜ライトアップも楽しめるといいます。東伊豆エリアの河津町と同じように、河津桜がきれいなエリアとして地元の方々から親しまれているそうです。
《みなみの桜と菜の花まつり》
・2月1日にオープニング神事
・まつり期間中は18時~21時にライトアップ
・2月16日と23日に伊勢海老みそ汁の無料配布を予定
南伊豆町の河津桜
ライトアップされた南伊豆町の河津桜
南伊豆町の北隣、松崎町も魅力のある地域です。豊崎ホテルの食事処「民芸茶房」では、新鮮な海産物が人気です。マンボウの刺し身も味わうことができました。なまこ壁通りは、江戸時代の風情をいまに残す街並みです。なまこ壁とは、壁面に四角い平瓦を並べて張り、その継ぎ目を漆喰でかまぼこ型に盛り上げるつくりで、防火や防風を目的として普及したそうです。近くの牛原山の山麓にある伊奈下神社では、ふくろうの「いなちゃん」がお出迎えをしてくれました。
なまこ壁
いなちゃん
駿河湾をめぐる旅、最後は伊豆半島の西海岸に戻ってきました。松崎町の雲見海岸。海水は透明感があり、天候がよければ富士山が美しく見られることでも人気です。白い雲や青い海の景色が刻々と変わりゆく海岸は、いつまでも見続けることができる美しさでした。
広告会社に勤務し、地方自治体のPRを担当。色々な地域の魅力を知りたいと、2022年4月に会社を辞め旅人になると決意。旅先での出会いや発見を発信する「カナフキン」として旅を続けています。
https://www.instagram.com/hokkorihan82/profilecard/?igsh=MW5zdzk0dDllZ2l6Zw==
《旅するカナフキン 主な訪問先》
駿河湾フェリー https://www.223-ferry.or.jp/
土肥金山 https://www.toikinzan.com/
LOQUAT西伊豆 https://loquat-nishiizu.jp/
テラッセオレンジトイ https://t-orangetoi.com/
下田ロープウェイ https://www.ropeway.co.jp/wp/
竜宮窟 https://www.shimoda-city.info/ryugu
扇谷製菓 https://ougiya-melon.com/
豊崎ホテル https://toyosaki-hotel.com/
なまこ壁 https://izumatsuzakinet.com/seacucumberwall/
★クイズに正解された方のなかから「駿河湾フェリー乗船招待チケット」をプレゼントします。
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