街に開かれた美術館がコンセプトの当館は、広い開口部のある展示室が特徴です。周辺にも作品を点在させ、街と美術館をシームレスにつなげる構造になっています。
館の外壁を飾る「RR Haiku 061」は、1980年オランダ出身のラファエル・ローゼンダールが、日本の俳句に興味を持ち制作したシリーズ作品の一つです。五七五にはこだわらず、「what you have/what you want/what you need」という3行の文章で構成されています。
ローゼンダールは〝インターネットアートの申し子〟と呼ばれ、Webサイトを作品として発表したことで知られるアーティスト。言語はある種のシステムであると度々語っており、記号で指示し実行させるプログラミング言語に近いと考えているのかもしれません。
そんな彼は俳句についても、簡潔で記号的な言葉を提示することで読み手の脳内で特定のイメージを想起させるシステムの一つのように捉えているようです。旧ツイッターへのテキスト投稿から始まり、平面、本など媒体を変えながら制作は続きました。様々な媒体で表現できることも、俳句の特性をうまく利用していることを改めて示しているのでしょう。
「SOUTH」は3月31日まで個展を開催中の荒木悠(1985~)が、世界各地の職人にアカデミー賞のオスカー像の複製制作を依頼したシリーズの一つで、岩手県の南部こけし職人による木彫と、その制作風景の映像を展示しています。
異なる文化圏のモチーフを利用し、新しい表現を生み出す手法は、「Haiku」と通ずるものがあると思います。
(聞き手・笹本なつる)
《十和田市現代美術館》青森県十和田市西二番町10の9(☎0176・20・1127)。午前9時~午後5時(入館は30分前まで)。1800円。原則月曜、年末年始休み。
十和田市現代美術館
https://towadaartcenter.com/
企画展 荒木悠 LONELY PLANETS
https://towadaartcenter.com/exhibitions/araki-yu/
キュレーター・中川千恵子さん なかがわ・ちえこ パリ第8大学造形芸術学科現代美術メディエーションコース修士課程修了。2019年から現職。 |