読んでたのしい、当たってうれしい。

私のイチオシコレクション

万華鏡 仙台万華鏡美術館

時間を忘れる世界 閉じ込める

万華鏡 仙台万華鏡美術館
「FU・JI・YA・MA」の外観。山見浩司作、2014年。裏側は赤系のステンドグラスで構成
万華鏡 仙台万華鏡美術館 万華鏡 仙台万華鏡美術館 万華鏡 仙台万華鏡美術館

 個人コレクターにより設立された当館は国内外の万華鏡500点以上を所蔵しています。

 万華鏡は19世紀初め、スコットランドの物理学者が発明し、1819年には日本に伝わっていたようです。

 長く玩具とみなされてきましたが、1980年代の米国での雑誌の特集や展覧会を機に、次第に芸術として注目されるようになりました。

 内側には複数の鏡が筒状に組み合わされ、外側のボディーの端にはのぞき穴、反対側にオブジェクト(ガラス片やビーズ)を入れた容器が付けられているのが基本の構造。

 鏡の数や角度によってオブジェクトがつくる内部映像の見え方が変わります。

 高さ44センチの「FU・JI・YA・MA」は世界大会で過去6回最優秀作品賞を受賞した山見浩司さんの作品。

 ステンドグラスのボディーは表側が青い富士、裏側は赤富士です。

 オブジェクトは2枚の円盤に取り付けられ、左右のハンドルを回すとそれぞれの円盤が回転し、ボディーの色と呼応した青と赤の内部映像が楽しめます。

 外観の富士の二つの姿と二重のオブジェクトによる内部映像、双方の二面性が魅力です。

 米国人の作家夫妻による「スノーフレークス」はのぞき穴が二つあり、2枚の鏡をつけた穴からは大きな一つの雪の結晶が、3枚の鏡のもう一方では複数の結晶が映し出されます。

 オイルとともに封入されたオブジェクトの動きはゆっくりで、余韻を感じられます。

 万華鏡は日常を忘れさせ気持ちをリセットしてくれます。いつまでも見ていられて、やめどきが分からないのが難点ですね。

(聞き手・小森風美)


 《仙台万華鏡美術館》 仙台市太白区茂庭松場1の2(問い合わせは022・304・8080)。午前9時半~午後5時(入館は30分前まで)。900円。1月14、21、28日、2月4、18、25日休み。

わたなべ・ようこ

スタッフ 渡辺陽子さん

 わたなべ・ようこ プライベートで同館を訪れ万華鏡に魅せられ、開館翌年の2000年から勤務。来館者に作品の背景や裏話を披露することも。

(2020年12月1日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

私のイチオシコレクションの新着記事

  • 似鳥美術館 北海道で生まれた家具のニトリが開いた「小樽芸術村」は、20世紀初頭の建物群を利用して、美術品や工芸品を展示しています。

  • 太陽の森 ディマシオ美術館 フランスの幻想絵画画家として活躍しているジェラール・ディマシオ。彼が制作した縦9×横27㍍の巨大な作品が当館の目玉です。1人の作家がキャンバスに描いた油絵としては世界最大で、ギネス世界記録にも内定しています。

  • 宮川香山眞葛ミュージアム 陶芸家、初代宮川香山(1842~1916)が横浜に開いた真葛(まくず)窯は、輸出陶磁器を多く産出しました。逸品のひとつが「磁製緑釉蓮画花瓶(じせいりょくゆうはすがかびん)」です。

  • 小泉八雲記念館 小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が『怪談』を出版して今年で120年。『怪談』は日本の伝説や昔話を、物語として再構築した「再話文学」。外国で生まれ育った八雲が創作できたのには妻の小泉セツの存在が欠かせません。

新着コラム