駿河湾に突き出た三保半島に位置する当館は、駿河湾の生き物の調査・研究を中心とした海洋科学の総合的な博物館です。湾の奥でも1千メートル級の水深がある駿河湾は深海湾といわれ、当館で飼育展示している生き物の中にも深海にすむ魚がいます。
深海魚には、常識を覆す特徴を持っているものがいて、それが魅力といえます。ただ、深海との水圧の違いなどに耐えられず、生きたままの展示が難しいため、標本で紹介しています。
ビワアンコウのメスは体長が1・2メートルにも達し、この仲間としてはかなり大型です。頭部に発光器があり、真っ暗な深海で獲物をおびきよせ、たくさん食べて体を大きくします。
一方オスは数~十数センチほどしかなく、メスを発見すると、かみ付いて付着し、そのままくっついて、消化器系や目が退化してゆきます。メスの血液から栄養を得て生殖器官を発達させ繁殖します。メス1匹に複数のオスがつくこともあります。生物密度が低く出会いの機会が少ない深海で、効率よく繁殖するための戦略と言えます。
サクラエビ漁の盛んな由比港付近では、サメの仲間のラブカが生きたまま漁の網に入ることがあります。間もなく死んでしまいますが、卵内の胎仔を取り出して、1年近く飼育することに成功しました。多くのサメでは5対のエラ穴が6対あり、歯が三つまた状に分かれているなど、原始的な特徴を残し、生きている化石と呼ばれています。
(聞き手・三品智子)
《東海大学海洋科学博物館》静岡市清水区三保2389(問い合わせは054・334・2385)。
午前9時~午後5時(入館は30分前まで)。
1500円。
(祝)を除く(火)休み。7月、8月は無休。
冨山 晋一 とみやま・しんいち 東海大学大学院海洋学研究科修了。博士(理学)。2006年から現職。駿河湾に生息する深海性の魚の分類や生態を研究する。 |