ピラミッドなどを模した外観の当館。人類史展示室では、中南米の考古資料を中心に常時約200点を紹介しています。収集のコンセプトは「崇(あが)める心」。人間の力が及ばぬところに神の世界があるとする、世界各地の信仰心が生んだ造形に迫ります。
ミイラには、死後の世界への思いが顕著に表れています。世界最古の人工ミイラは、約7千年前に古代アンデスで作られました。人々はミイラを生きているものとして扱い、生前と変わらない関係を保とうとしたようです。
アンデスのミイラの多くは、座った姿勢で何枚もの布に包まれています。ペルー中央高地で発展したワリ文化の「箱型帽子付き羽根人面」は、ミイラに取り付けられた擬頭です。毛織物にくくり付けられたコンゴウインコなどの羽毛がとても鮮やか。目や口も、切りそろえた羽根で表現されています。羽根を使用するのは高位の人物を、顔の赤色は死者を表していると考えられます。四角い帽子には、毛を織物の材料にする家畜のリャマのような図柄が見られます。
古代エジプトでは死後の世界で永遠の命を得るために、ミイラとして体を保存する必要があると信じられました。「有翼スカラベ型護符」はミイラ職人が包帯の心臓部分に縫い付けた陶製の護符です。
スカラベとはフンコロガシのこと。運んでいる丸いフンが太陽のようであり、フンに産み付けた卵から新たな命が生まれることから、再生・復活を象徴しました。釉薬(ゆうやく)のエジプシャンブルーがナイル川を思わせます。
(聞き手・中村さやか)
《光ミュージアム》 岐阜県高山市中山町175(問い合わせは0577・34・6511)。
午前10時~午後5時(入館は1時間前まで)。
900円。(祝)を除く(水)休み(冬季休館あり)。
5月31日まで臨時休館中。
学芸員 今泉たまみ いまいずみ・たまみ 開館準備中の1994年から勤務。これまでに「エジプトvs縄文展」「古代中南米文明展 インカ・マヤ」などを担当。 |