江戸時代の長崎奉行所立山役所の跡地に立つ当館は、奉行所を模した外観。当時の奉行所は中国やオランダとの交易品の管理が重要な仕事でした。当館は海外交流史をテーマに、8万点超の資料を所蔵していますが、海外の影響が反映された異国情緒が漂う品も多く展示しています。
長崎からは陶磁器や漆工芸品などが輸出されましたが、カラフルな「青貝細工」は外国人に好まれたようです。18世紀に長崎で発展した技法で、鳥などの形に切り出した貝を薄く削って裏から墨や絵の具で彩色し、漆面に貼り付けました。手間がかかるため大正初期には途絶えてしまい、いまではここまで貝を薄くする技術は解明されていません。「花鳥螺鈿薬瓶箱」には、側面に尾の長いジュタイチョウのつがいの姿が。中国から長崎に伝わった書画にも、縁起のよい鳥としてよく登場します。
一方で海外の技法やモチーフを取り入れたものも。「菊に文鳥ガラス絵小箱」は、装飾した紙箱にガラス絵がはめ込まれています。文鳥は一見日本風ですが、江戸時代には異国的な風情を感じさせる絵柄でした。貿易船の中継地だったインドネシアが原産で、愛玩用に日本に持ち込まれたのです。はじめ輸入品であったガラスは、17世紀後半に中国から長崎に製法が伝わりましたが、それでも大変な高級品でした。文鳥とガラスという長崎ならではの取り合わせは、日本全国から長崎を訪れた医者や画家ら遊学者にも、とても魅力的だったに違いありません。
(聞き手・中村さやか)
《長崎歴史文化博物館》 長崎市立山1の1の1(問い合わせは095・818・8366)。午前8時半~午後6時(4~11月は7時まで。入館は30分前まで)。2点は2月16日まで展示。600円。第3(月)((祝)(休)の場合は翌日)休み。
研究員 長岡枝里 ながおか・えり 2017年から現職。美術工芸と黄檗文化を担当。19年度企画展「収蔵品展 学芸員のイチ推し!」を企画・担当した。 |