鳥取砂丘の砂を用いた砂像を、延べ床面積3千平方メートルの建物内に展示しています。毎年春に作りかえるため、その時しか見られない一期一会のはかなさが魅力です。12回目の今期のテーマは「砂で世界旅行・南アジア編」。マハトマ・ガンジー生誕150年をきっかけに、インドなどを題材に、10カ国21作家が21作品を手がけました。
イタリア人彫刻家レオナルド・ウゴリニ(1969~)が制作した「霊廟タージマハル」が今年のメイン。タージマハルは、17世紀にインドを統治したムガール帝国皇帝シャー・ジャハーンが造った妻ムムターズ・マハルの墓。大理石の滑らかさ、繊細な文様、漂う雲、生い茂る木々など、異なる質感を、砂だけで見事に表現しています。砂像は、砂と水を混ぜて圧縮した土台を彫っていきます。砂はもろく、細心の注意が必要。また、重みで崩れないよう、上部にいくほど薄く作ります。下部の土台を足場がわりに上部から彫るため、後から手直しができないにもかかわらず、均衡が保たれています。
手前には、ロシアのイリヤ・フェリモンツェフ(1976~)ら3人の彫刻家が彫り上げた、皇帝夫妻や臣下たちの像を配置。衣服のひだや象の皮膚などの細密さが秀逸です。
ネパールの首都カトマンズにある世界遺産を再現した「古都パタン ダルバール広場」は、奥に続く道によって、街の中に入り込めそうな錯覚を覚えます。一色の砂でも、陰影や遠近法を駆使すればここまで立体的に見せてくれるのです。
(聞き手・下島智子)
《砂の美術館》 鳥取市福部町湯山2083の17(問い合わせは0857・20・2231)。午前9時~午後6時((土)は8時まで。入館は30分前まで)。600円。無休。今期は来年1月5日まで。
館長 松尾真司 まつお・しんじ 2013年、同館指定管理者であるイズミテクノに入社。広島県民文化センター副館長を経て、18年に砂の美術館館長に就任。 |