読んでたのしい、当たってうれしい。

朝井まかてさん
あべのたこやき やまちゃん2号店 ベスト

 江戸時代のベストセラー作家・西鶴や馬琴、幕末から明治へと駆け抜けた歌人中島歌子――数多(あまた)の人間像を書き続けています。書き手として「透明な存在」になり、歴史の感情に立ち入ってゆきたい、と思います。だから作品に向かっている時は「ゾーン」に入っているようなもの。どうにか書き上げると気力も体力も「目盛りゼロ」になってしまいます。

 執筆の合間に料理もしますが、たこ焼き、お好み焼きといった粉もんは、プロの味にかなわない。なじみの「あべのたこやき やまちゃん2号店」に来れば決まって頼むのが「ベスト(無地)」です。ちなみにソースとマヨネーズがかかっているのは「ヤング」。なんか昭和っぽいでしょう(笑)。

 あわてて食べるとやけどしそうな出来たてを、香りも楽しみつつハフハフいただく。関西に足を運んだ友人もこのシンプルで深い味にやられます。

 お店の運営会社によると、たこ焼きには鶏ガラ、昆布、かつおなどをブレンドした出汁(だし)と10種類以上の季節の野菜や果物をあわせた秘伝のスープを使っているのだとか。

 関西人だから出汁の味と香りが好きなんですね。ほっとして、よっし、また頑張ろう!と思えます。

(聞き手・木元健二)

 ◆大阪市阿倍野区松崎町2の3の53(☎06・6626・6680)。「ベスト」(6個)630円。平日は午前11時45分~午後10時、金曜のみ~11時。土曜は午前11時~午後11時、日曜・祝日は午前11時~午後10時。2号店の近くに本店があり、梅田や東京・お台場などでも展開。


  あさい・まかて 1959年、大阪府出身。2008年、小説現代長編新人賞奨励賞を受けて作家デビュー。歴史時代小説の書き手として知られ、著作多数。14年「恋歌」で直木賞、20年「グッドバイ」で親鸞賞、21年「類」で柴田錬三郎賞など。

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