成山亜衣さん(画家)
「赤毛のアン」(完全版) アンの思考の構造はどんなんかなと考えていたら、彼女の手紙を養親のマシュウとマリラが読むシーンを思い出しました。
「赤毛のアン」(完全版) アンの思考の構造はどんなんかなと考えていたら、彼女の手紙を養親のマシュウとマリラが読むシーンを思い出しました。
見るたびに発見や感じ方の変化があって、そこからまた想像が広がります。人生の節目ごとに見たくなる作品ですね。
公開された当時、説明過剰な作品が増えているなとちょっと違和感を感じていて。そんな時、演劇学科の先生からこの作品を薦められました。心情を目の動きや口の緩みなどで表現して、「想像の余白を大事にする」という私のモットーにも通じていて何度も見返しています。
ラウリの妻イロナを演じているカティ・オウティネンの表現の仕方が大好きです。この作品の前に公開された映画「マッチ工場の少女」でも彼女が主役を演じていますが、そこからの成長を見ている感覚にもなります。
ヘルシンキの市電の運転手だったラウリが解雇され、高級レストランで給仕長として働いていた妻イロナも職を失う。ラウリの再就職先として決まりかけた仕事も耳の異常が発見されたことにより立ち消えに。
ショックで靴置き場に頭から落ちたラウリを見たイロナは、自分も靴箱に頭を突っ込んで横たわります。同じ行動をすることで痛みを分かち合う、しかも自然と行っているところにグッときました。
どん底に追い打ちをかけるような展開が続きますが、最後はもがきながらも生きてきた積み重ねが2人を助けます。
浮雲が形を変えていくように、たとえまた大きな問題が降りかかったとしても、この2人ならきっと乗り越えられる。そんな希望が見えた2人の目をイラストで表現しました。
(聞き手・中山幸穂)
![]() 監督=アキ・カウリスマキ
制作国=フィンランド 出演=カティ・オウティネン、カリ・バーナネンほか
あくざわ・めぐみ 1978年生まれ。東京都出身。イラストレーションを中心に、児童書の挿絵やCDジャケットなども手がける。著書「おばけのモックン」など。
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