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私の描くグッとムービー

杉山早陽子さん(創作和菓子「御菓子丸」主宰)
「花様年華」(2000年)

引かれ合う2人を包む色彩美 形に

杉山早陽子さんが「花様年華」の1シーンをイメージして制作した和菓子

 和菓子作りのイメージを膨らませたいとき、見たくなるのがウォン・カーウァイの作品です。

 1960年代の香港を舞台に描いた大人の恋物語「花様年華」。物語の内容よりコントラストの強いダークな色彩の中でみせる映像美に引かれます。

 印象的なのが、チャウとチャン夫人が食事の帰りに夜道を歩くシーン。互いの伴侶の情事がきっかけで距離が縮まり、引かれ合う2人。離れたくない雰囲気を表すのに、チャン夫人の手元がアップで映されます。チャウのスーツを人さし指でなぞる微細な動きから、別れがたい様子がすごく伝わってくるんです。細部をクローズアップして心情を描写する、それがウォン・カーウァイの素晴らしいところだと思います。

 2人がレストランで食事をするシーンでは、壁の模様や、淡いグリーンの食器が印象的でした。そこからインスピレーションを受け、バタフライピーの花で色を付けた淡いブルーの寒天にキンモクセイを浮かべ、杏仁豆腐(あんにんどうふ)と層にした和菓子を作りました。控えめな甘さの中に、キンモクセイの酸味と杏仁のクリーミーさを感じる一品です。和菓子に合う柄の皿にのせて、食後のデザートとして2人に食べてもらいたいですね。

 学生の頃からアジアの文化に興味があり、最近では中国で和菓子を振る舞う仕事もしています。口に合わなければ「おいしくない」って言われるし、逆においしければ受け入れてくれる。率直さがいいんです。和菓子は食べてしまえば消えてなくなるもの。はかなさ、潔さが私の人生観にフィットしている気がします。

(聞き手・片山知愛)

 

 

  

 監督・脚本=ウォン・カーウァイ

 製作=香港

 出演=トニー・レオン、マギー・チャンほか

 すぎやま・さよこ 2014年、御菓子丸を始動。月一の喫茶イベントやオンラインストアで和菓子を販売。著書に「御菓子丸の菓子」(torch press)。

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