12歳の男の子4人組が、ひと夏の冒険の旅へ。線路伝いにひたすら歩く姿がとても印象的です。
映画を初めて見たのは小学5年の頃。「死体を探す」という旅の目的も劇中の描写も何だか怖くて、あまりピンときませんでした。大人になってから再び見て、そのイメージは一転。彼らの旅はほんの2日間ですが、とても濃密だと思いました。ぱっと輝いた瞬間に消えてしまう花火のようです。
4人は性格も家庭環境も違うのに、とても仲良し。秘密基地に集まって軽口をたたき、旅の夜には泣きながら打ち明け話をする。互いに認め合っていることが伝わってきます。
旅はわいわい楽しいばかりでなく、ちょっと切ない。彼らは不満や寂しさをのみ込んでいたり、小さな町に息が詰まっていたり。どこか遠くへ行きたいという思いがあったのかもしれません。
そんな旅にも、4人の濃密な関係にも終わりが訪れます。映画は、大人になった主人公が回想する形で進み、その後4人は別の道を歩み始めたことも語られます。
今年12歳の娘を見ても、大人への入り口に差しかかっているなと感じます。乳幼児期は「早く歩かないかな」「おしゃべりしないかな」と次のゴールを見がちでしたが、その時代が懐かしくてさみしい。柔らかい頰や手を思い返しながら絵本を描くこともあります。渦中にいる時は夢中だったりつらかったりして気づかないけれど、振り返ると輝いて見えるものですね。
「あの夏」には戻れない。だからこそ、ずっと心にとっておきたいのだと思います。
(聞き手・木谷恵吏)
監督=ロブ・ライナー
製作国=米
出演=ウィル・ウィートン、リバー・フェニックスほか
1978年、福岡生まれ。主な作品に「あめふりさんぽ」「なきごえバス」や、「せんそうしない」の絵(文・谷川俊太郎)など。静岡県三島市在住で、絵本専門店「えほんやさん」代表も務める。
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